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2020-12-31 00:00
台湾知識人との会話
中山 太郎
非営利団体非常勤職員
台湾知識人と会話することがあったところ、うち興味を惹かれた点を次の通り紹介したい。まず、筆者がいつも驚くのは、台湾の方の日本についての知識の範囲は、日本人が台湾を理解しているよりも何十倍何百倍だということだ。12月のご逝去の話から始まった。30年前には米の対日理解は、日本の高度成長が米国を脅かす存在となり、それなりに上がってきていたが、対中国、台湾については、専門家と言えど極めて貧弱だった。今や、中国古典を引用しての話も可能なぐらい進んできた。最近、米の専門家と、孔子が理想とした周王朝時代の話をした。周が弱体化して、統率力が弱くなった場合でも、周辺国はとってかわるということはしなかった。それは、天命がまだ周王朝にあると見られていたからだ。
今の米中対決でも、中国は決して米にとって代わることはない、それはまだ天命が下っていないからだ、と冗談交じりに話したが。引用した荘子の比喩などもキチンと理解してくれた。これは、専門家の長い努力で中国古典なども英語翻訳が充実し、飛躍的に中国文明の理解が深まってきたからといえよう。ボーゲル氏は、ハーバード大の専門家として多大な努力をした。同氏が、よく日本の実業家で同大学における東アジア研究支援に尽力してくれたと名前を挙げていたのが、槇原氏だ。調べると槇原氏は安倍総理が小学校から大学まで学んだ成蹊に学び、高校生の時に成蹊の創設者の中村春二氏の紹介で、米聖公会のつてで米に学び、その後ハーバード大に進んでいる。中村氏は、学歴がなく苦労していた著名な植物学者の牧野富太郎を援助したり、多方面で活躍されているのは興味深い。
(筆者よりコロナ対策での台湾の成功ぶりについて述べると)2003年まず中国南部の広東省で発生し、香港、台湾と荒らしまわったこの感染症騒ぎは、日本、欧米はまったく対岸の火事だった。この地域特有の風土病の一種だともとらえられた。特効薬がなくパニックになった台湾は、ある日政府の強権で病院を、その日偶々外来で診察に来ていた人も含め、封鎖し、窓からその人たちが、助けを求めて叫んでいるのをテレビで映したりし、住民を恐怖に落とした。その頃台湾人医師がSARSに罹患しているのを知らず、日本へ入国し、大騒ぎとなった。日本のメディアは、医者のくせに何事かとバッシングの大合唱だった。その時の、WHOは、今日本で座長役で活躍をされておられる尾身氏などが居られ、中国入りし的確な指示、各国への通報をした。しかし、全体としては、台湾への情報供与は少なく、個人的チャンネルで、日米から得たりした。その時、WHO本部はあてにならないと我々は確信した。今回、それが役立った。日米は、文句を言いつつWHO本部の通報を待っての、動きということで後手に回ってしまった。台湾は、あの時の身に染みての教訓から、人々もマスク、手洗いなど衛生面での徹底、医療関係用品のいち早い手配など、動きは早く、人々もその重要性をよく認識していたのだ。SARSの時は、中央政府は民進党の陳水扁総統、首都の台北市長は、国民党の馬市長(のちの総統)との意見の違いも大きかった。これも痛手だった。
(米中対立の台湾への影響について)トランプ政権が、台湾への武器供与を加速させていることは、痛しかゆしだ。現政権は好機と捉え、米台関係の突破への道と捉えるグル-プもいるだろうが、やはり、米の安全保障政策の一環として行っているのだと冷静に見るべきだろう。武器供与が、中国の容認の度合いを大きく越したと見なされれば、どうなるか分からない恐怖もある。しかし、総統選挙で中国が強面に出て、民進党に有利としたのに凝りて、ジレンマにあるともいえる。米中のはざまで苦しいんでいるのは、日本やASEAN諸国どころの話ではない。台湾の主要産業であるIT機器メーカーの生産拠点は今や、ほとんどが中国大陸にある。米に輸出する製品の工場を、慌てて、台湾の桃園やアセアン諸国へ分散しだしてもいる。ジレンマは日本以上だ。企業にとり頭が痛いのは、2024年には次の総統選挙がある。その時の世界情勢はどうなっちるのか、もし、親中派の国民党総統となった場合、中国との関係がどうなるのか、先が読めないところ大だ。トライしてみてダメならやり直すと機敏にフレキシブルに動くよりほかはない。戦略の変更を行う身のこなしの強さは小国台湾の一つの戦略でもある。
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