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2020-12-22 00:00
谷内正太郎氏の発言内容を考える
中山 太郎
非営利団体非常勤職員
雑誌『公研』12号で、安倍内閣において国家安全保障局長を務めた谷内正太郎氏が雑誌が主催したセミナーで「ウィズ・コロナの国際情勢と日本外交」と題し意見を表明している。詳細は是非同誌に当たって頂きたいが、筆者の注目した点を述べる。
「安倍総理は、誠実に熱意をもって外交に取り組んだ。これにより、日本の国際社会における存在感を高めた」、「米など西側諸国とはうまくいったが、中国、韓国については停滞、ないしは行き詰まり感はぬぐえない。北朝鮮、ロシアとも似た状況だ」、「(コロナ猖獗の中)今各国は、医療体制は、グローバルな助けは期待できないとして、決局は自国の中でやっていかねばとの意識が強くなっている」、「EUの内部でも、ハンガリー、ポーランドも権威主義的にコロナ対策を行っている。客観的に見ても、権威主義的な方が成果が上がる傾向だ」、「特にアフリカ、中南米において中国型の監視社会的手法を採用しだしている」、「今世界を見渡すと、民主主義より権威主義的手法を取る国の方が多くなっている」、バイデン米次期大統領の対中政策について「トランプ政権の政策を踏襲し、当分は同様な強硬的立場をとるだろうが、同盟国との共同戦線を取りながらの対応で、これは日本などへの責任分担も増える可能性がある」(この最後の部分は、谷内氏の言葉ではなく筆者の発言の理解内容を記したものだ。)「一方、中国との協調も模索する。気候変動、核不拡散、新型コロナのようなグローバルな公衆衛生面で、中国との協調は必要と考えてもいる」である。
同じ号で、作家の水村早苗氏のインタビューも注目される。(同氏は少女期に父の都合で渡米し、大学まで終えその後日本へ帰国し作家活動をしておられる。著書には「日本語が滅びるときーー英語の世紀の中で」などがある。)「今回のコロナで露呈されたのは情報弱者ぶりだ。日本語ニュースの貧弱さ、どこからこんな情報を得てくるのかと思うような見当違いなニュースがある。」、「情報ギャップがある中で生きていれば国にとして弱体化していく」、「(しかし一方)言葉は情報量などと言うものに還元できるものではない」、「英語以外の言葉も流通させるべきだ」、「言葉が多様であればあるほど人類が本来持っている多様な可能性が見えてくるのだ」、自分は翻訳できない文学作品をこれから創作していきたいとして、日本文学での翻訳不可能なものとして、永井荷風「断腸亭日乗」、幸田文「流れる」をあげておられる。
「イギリスは美味しい」などの著作で人気のある林望氏もその随筆で自分は近代文学の中では森鴎外の「渋江抽斎」が一番の愛読書であるが、英国で日本文学の大家と会話の時それを述べたら信じられないという顔をした。幾らその良さを説明しても分かってもらえなかったと述べておられたのを思い出した。文明の壁の複雑さ、ないしは妙味、奥深さということだろうか。
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