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2020-12-19 00:00
第三国への歴史認識問題での広報について
中山 太郎
非営利団体非常勤職員
最近、東京の某シンクタンクが中国人ジャーナリスト馬立誠の著作である「憎しみに未来はない」の英訳を出した。これを受けて、歴史認識問題での第三国への広報について考えてみたい。馬は、元「人民日報」の記者で、その後中国の社会変革、ナショナリズムについての執筆をしている。この著作はその一つで、すでに日本では翻訳もされている。
中国で長らく仕事に従事してきた筆者の現場からの声だが、小泉総理は「自民党をぶっ壊す」と言って国民の支持を一頃得た。外交での「日中関係」へのダメージにも大いに貢献した。ある人は筆者に、後継の安倍政権の外交では、その修復に第一次も第二次でも多大なエネルギーを費やさざるを得なかったと述べるものもいる。小泉氏は、やみくもに靖国参拝を毎年繰り返した。これは当初の自民党内のライバルの橋本龍太郎総理が靖国遺族会会長であったので、それへの当てつけだと述べる人もいる。小泉氏は毎年参拝すると大見えを切り、今までの経緯も無視し、国際政治の複雑さに無頓着な多くの国民の支持を得たのだった。
小泉政権の前期の頃、中国では「対日新思考」という考え方が、知識人層の間で出だしてきていた。「日中は歴史問題から解き放たれたれるべきだ」と主張するもので、その中心人物として馬がいた。彼は「今の日本は再び軍国主義になる心配はない」「これから、中国は日本と経済面において争うべきだ」と言う論陣を張った。勿論、この論は、当初中国国内で猛烈に叩かれた。しかし、当時の中国のマスコミは、馬を擁護する空気も強かった。それに冷や水を浴びせたのが、小泉氏の行為だった。中国の反日層を鼓舞し、やはり日本は軍国主義の道を歩むのだと叫ばせた。日本政界の内幕に詳しいある中国人ジャーナリストは筆者に、小泉氏は福田赳夫総理の秘書も務め、当時の党内のライバル田中派の金権政治に憎しみを抱いていたのだ。それで今、田中派の金脈の日中間のチャンネルつぶしをしているのだとも述べていた。この対中経済チャンネルの切断は、中国は経済の勃興期にあり、おいしい案件が多かったのに、その多くが独はじめ欧米勢に回されて仕舞った。中国政府としては対外資本の多元化を実現できたというところだろう。
歴史問題は、二国間だけの対話ではなかなか前へ進まない。中国や韓国のように第三国を巻き込むのが大切であるが、彼らがやるような偽造文献、フェイク写真その他何でもありのやり方に日本はあわないし、長い目で見て決して得策ではない。今豪州は、中国がベトナムでの豪州兵士のフェイク写真を使って言われない批判をしているとカンカンだ。この馬の著作のような良質な作品をキチンと翻訳し、第三国の人たちも読めるようにしておくという気長な姿勢が必要だと思う。
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