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2020-12-09 00:00
独断と偏見での日中関係史回顧
中山 太郎
非営利団体非常勤職員
古代・中世から一つ、近現代史から一つ、日中関係の大きなイベントを私の独断と偏見で取り上げて考えたい。古い時代では、鎌倉幕府時代の元寇の役であろう。時の政治の担当者は執権北条時宗である。2回にわたる侵攻を神風もあったかもしれないが何とかしのげた。その父の時頼時代から元の動きは幕府につたわっており、日本国一団となっての守りに腐心した。父子ともにそれで心身をすり減らしたのか、早死にした。北九州には、当時立てた元の兵士を悼む碑が残っている。日本の精神では、亡くなれば敵も味方もない、皆弔いの対象になるのだと知り合いの中国人学者を案内して話したこともある。日本以外の国では、こうした心情はあまり伝わらないのだろう。やはり、日本は海に囲まれ、大陸の異民族が常に襲来してくる、殺伐とした世界から見ると平和な環境を手に入れていたのだ。その埋め合わせにか、地震、火山の噴火、台風と自然災害は多いほうだ。井上靖の小説「風濤」は、元の命令で造船や先兵を務めさせられる朝鮮半島の高麗の苦心を描いて余すところがない。元が日本征伐をあきらめてくれ喜んだのは、日本より朝鮮半島の人々かもしれない。日本侵攻で言えば、日本人が好きな三国志の時代、呉の国の孫権は、戦争には兵士だけでなくその支援に奴隷が必要だとして、日本へ将軍を派遣した。彼は奄美諸島までたどりつたようだが、日本本土にはたどり着けなかったようだ。それで助かったのだ。
近現代史からは、私は、鄧小平の登場と日本、米国訪問をあげたい。皆がよく知るように、その直前まで米は果てしなく続くベトナムとの戦争に疲れ果てていた。そのベトナムを陰で支援していたのは、中国でもあったのだ。文革の嵐の中、何回も失脚、復活を繰り返ししたたかに生き伸びてきた鄧小平は、日本では松下や東芝を訪問し、中国が世界から大分引き離されているのに愕然とした。日本企業の中国支援も取り付けた。しかし一方で彼は、その後の天安門事件などあり、色あせてきた中国共産主義思想の代わりとして愛国主義を植え付け、その目玉として日本をターゲットにしていたのだ。尖閣諸島問題でも、後代の知恵に任せようと思わせぶりな発言でたぶらかせていたのだ。彼は米ではテキサスにも行き、テキサス帽をかぶったりビーフを食べたりした。
帰国後、突如今まで味方とみなしていたベトナムへ侵攻した。米に行きその心情が乗り移ったと見る者もいた。文革で唯一あまり傷つかず、その牙城を守り通し、継続してのエリート層を持ち、少しのさばりだしてきていた解放軍をたしなめる意味での紛争だという者もいた。果たして、歴戦錬磨のベトナム軍に手痛くやられた。ベトナム人学者が述べていたが、彼の父はその戦役に参加したのだが、中国人民解放軍は、見方の兵士が倒れ、助けを求めている上を戦車を走らせ、ひき殺して攻めてきたそうだ。そして、現代の米中対立の中で、中国国内の不満を宥める、風穴を通す意味での小規模戦闘をまた、対ベトナムと企画しているのではと、ベトナム人学者は危惧していた。尖閣や台湾海峡への領海領空侵犯は煙幕で、突如仕掛けてくる。それは最近、あまり中国のいうことを聞か無くなったアセアン諸国への見せしめでもあるのだとも言う。
英週刊誌「エコノミスト」2020.11.27号に、米も西欧も中国を最大の競争相手と位置付け始めたが、肝心の大学や研究機関での中国研究が人気がなくなりつつあり、学習者も減りつつあると述べ、これでは困るのでないかと述べている。私の接触した学者も、ライシャワーやエズラ・ボーゲルのような天分のある人はさておき、普通の人間には漢字はあまりにも厄介だ。幼児期に学習しないと無理だと述べるものが多かった。私はかって、ここに日本の出番があると述べたこともあったが、ある国立大学の教授に話を聞くと、日本でも同じような状況だそうで、特に、最近の北大の近現代史研究の学者が、中国の研究機関からの招待で訪中した先で、どうということの内容の歴史文献を入手したとの嫌疑で長期間拘束された事件などから、現在、中国を踏み込んで研究するのは、はなはだしく困難だと見ているそうだ。「エコノミスト」紙も述べるように、中国語文献の翻訳、通訳などは、勉強家の多い中国人の若者たちがより能率よく安価にやってくれるので、高価格になりがちな西欧人や日本人の出る幕はないとのことだ。かって産業で、中国は安く品質も日に日にブラシュアップして世界を席巻したが、学問の世界でも似た事情になりつつあるのだ。「エコノミスト」紙は、今や、日本学習の方が人気が高いと述べている。記事を面白くするための脚色が入っているのではとも思ったが、昨日見た英映画「ノッテングヒルの洋菓子店」では、日本の菓子や品の良い食の雑誌編集者が映画の大事な役で登場した。
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