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2007-07-10 00:00
南進する中国に関心を
細川大輔
大阪経済大学教授
中国のASEANへの影響力が拡大している。2005年7月から実施されているモノに関する自由貿易協定(FTA)が、今月からサービス分野にも広がった。建築、環境、運輸、スポーツなど5分野26部門について、相手国での全額出資の現地法人の設立や合弁企業への出資比率の引上げが許可されるらしい。さらに中国は、FTA以外にもASEANとの関係強化の枠組みを構築している。ここで注目したいのは「環北部湾経済圏」構想である。
北部湾とは、ベトナムからいえばトンキン湾のことである。ベトナム戦争のきっかけとなったトンキン湾事件を覚えておられる方も多いはずだ。中越戦争以来長らく対立関係にあった両国は、すでに同湾の境界画定協定、漁業協力協定を発効させ、石油天然ガスの共同開発も進めることになった。こうした環境の変化を背景に、中国政府はこの地域をかねて西部大開発計画の対象地域に加えていたが、最近はASEANとの経済協力を念頭に、珠海デルタ、長江デルタ、環渤海湾の各経済圏とならぶ国家の第4番目の経済圏に育てようとしている。
驚くのは、中国が想定している「環北部湾経済圏」の参加国である。隣国のベトナムをはじめとして、マレーシア、シンガポール、インドネシア、フィリピン、ブルネイの7カ国といわれる。経済圏とはとらえにくいインドネシアやブルネイまでも入っているのは、東南アジアの資源開発が念頭にあるのであろう。北部湾の防城港、湛江港、欽州港では大型タンカーのバース建設が進んでおり、特に欽州市では石油天然ガスの大コンビナートが建設されている。
こうした動きにより、中国南部とベトナムは経済的に一体化され、経済面のウィン・ウィン関係をテコに、中国のASEAN諸国への影響力はますます拡大していくものと見込まれる。われわれは、「東アジア共同体」構想の抽象的な議論のみならず、個別の動きにも注意を払っていく必要がある。
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