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2020-10-19 00:00
(連載2)トランプの再選はあるのか
斎藤 直樹
山梨県立大学名誉教授
その後感染は世界各地へ急拡大し、3月の上旬には感染の中心地はヨーロッパに移った。テドロスが3月11日に「パンデミック」宣言を行ったときはすでに時機を逸していた。それでも「パンデミック」宣言を受け、トランプは3月13日に「国家非常事態」を宣言し、イギリスとアイルランドを除くヨーロッパの26ヵ国からの入国制限に打って出たが、遅すぎたことは否めなかった。その後、米国内で爆発的感染が起きたのは周知のとおりである。習近平とテドロスの関係には誠に不透明で怪しいものがあるが、テドロスの「パンデミック」宣言はそれにしても遅すぎたと言わざるをえない。このようにみると、習近平の責任も甚大であるが、テドロスの責任も誠に重いと言わざるを得ない。しかし今、米国内で責めを負わされているのは習近平でもテドロスでもなくトランプである。この結果、2020年1月まで大統領再選に向け順風満帆であった流れはほぼ完全に崩れることになった。欧州のイタリア、スペイン、フランス、ドイツ、イギリスでも程度の差はあれいずれも爆発的な感染に見舞われている。これらの国の首脳にとって幸運であるのは今年、大統領選挙や国政選挙がないことであろう。他方、爆発的感染に見舞われた国で今年、大統領選挙を控えた国は米国である。トランプがこれ以上のない逆風に晒されていることは容易に理解できる。こうした想定外の事態がバイデンに幸運な追い風を生んだのである。この爆発的感染がなかったならば、バイデンがトランプを相手に優勢に立つことなどなかったであろう。
それでは、11月3日までにトランプは劣勢な状況を変えることができるであろうか。厳しい状況とは言え、4年前の選挙を踏まえると、逆転の可能性がないわけではないであろう。世論調査各社の選挙予想の詳細をみると、その可能性は残されていることがわかる。と言うのは、接戦州での選挙予想が4年前とそれほど変わっていないからである。4年前に接戦州ではトランプがクリントンに平均値で約5%程度離されていたとされる。にもかかわらず、接戦州の多くをトランプが制することになったのは選挙予想につきものの統計上の誤差に加え、「隠れトランプ」支持者の存在によるところが大である。トランプの過激かつ極端な発言や勝利のためなら手段を選ばないといった政治手法は確かに一般受けし難いが、支持者の利益の確保を最大限に訴えるという手法で有権者のハートをトランプが掴んできたことは事実である。4年前、トランプ支持者の中にトランプ支持と明言できない人達が多数いた。これが「隠れトランプ」支持者の存在であり、最後の最後に接戦州をほとんど制するという衝撃の結末を生むことにつながった。問題はそうした「隠れトランプ」支持者が現在、どの程度いるのか。一定程度いるとされる「隠れトランプ」支持者が今回も接戦州で最後の最後でトランプを押し上げる可能性がある。
現在、接戦州ではトランプはバイデンに平均値で約4%程度離されているとみられる。4年前の約5%に比較すれば、逆転がないわけではないことがわかる。10月17日現在、トランプがバイデンに劣勢であるとは言え、その差が5%以内の接戦州では逆転が可能であるとみることができよう。ジョージア(選挙人数:16人)、オハイオ(選挙人数:18人)、メーン第2選挙区(選挙人数:1人)アイオア(選挙人数:6人)、ノースカロライナ(選挙人数:15人)、フロリダ(選挙人数:29人)、アリゾナ(選挙人数:11人)などがこれに含まれる。(Biden vs Trump: who is leading the 2020 US election polls? Financial Times.参照)現在わずかに劣勢であるとは言え、トランプはこれらの州をなんとしても制しなければならない。ここで落とすことがあるようでは、再選の可能性はほぼなくなるであろう。しかもトランプがこれらの接戦州をすべて制しても、270人にわずかに届かないと推測される。つまり、これでもまだ足りない。他方、バイデンにしてみれば、上記の接戦州を落としてもまだ270人以上の選挙人を獲得できるとみていると考えられる。こうしたことから、バイデンがいかに優位な立場にあるか理解できよう。
トランプが270人以上の選挙人を獲得するにはさらにネバダ(選挙人数:6人)、ウィスコンシン(選挙人数:10人)、ペンシルベニア(選挙人数:20人)、ミシガン(選挙人数:16人)など、現在、平均値でバイデンに5%から8%程度離されている州を制する必要があろう。ネバダ以外はどの州も10人以上の選挙人を有している。もし20人の選挙人を有しているペンシルベニアをトランプが制することがでれば、これだけで全体の選挙人獲得数は一変することになろう。トランプの選挙人獲得数が270を突破する一方、バイデンの獲得数は270に届かなくなる。このことから、トランプがペンシルベニアでの勝利に向けて血眼になっているのはよく理解できる。とは言え、現状のままでは、トランプにとってこれらの4州での逆転は至難と言える。トランプにとって厳しい闘いが続く。しかしここまでくれば、トランプにとって闘い方はシンプルである。これら接戦州で4年前と同様に投票前日まで有権者に訴え、駆け抜けることである。年齢や体の状態をうんぬんしている状況ではない。他方、優位に立つバイデンにとってみれば、現在の優位を保ったまま11月3日を迎えたいところであろう。とは言え、バイデンがこのまま勝逃げできると思えば、思わぬ落とし穴が待ち構えている可能性がある。(おわり)
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