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2007-06-29 00:00
「済州平和フォーラム」に出席して感じたこと
伊藤 憲一
東アジア共同体評議会議長
さる6月21-23日の3日間、韓国の済州島で「済州平和フォーラム」という200人規模の出席者を集めたかなり大がかりな国際会議が開催された。韓国側が官民総力をあげて組織した会議で、ノ・ムヒョン大統領、ソン・ミンスン外交通商相など韓国各界の要人が顔をそろえて出席していた。経費は現代財閥が大部分を負担した由で、潤沢であった。韓国以外からは、日本、中国、アメリカ、東南アジア、ロシアからの出席者が見られた。3日間の会議を一貫していたテーマは「東アジアの平和と繁栄をどのようにして確保するか」であった。「平和」ということでは、ちょうどヒル米国務次官補の北朝鮮訪問の直後であったこともあり、その評価を中心に朝鮮半島問題が主として議論されたが、「繁栄」ということでは、やはり東アジア共同体の可能性と展望が議論の中核になった。
この会議の模様は、韓国各紙が連日一面トップで報道していたが、日本でも日経新聞が報道していた。ノ・ムヒョン大統領は「6カ国協議は、北朝鮮の核問題解決後も、北東アジアの安全保障協力のための多角的協議機構として発展させることが望ましい」と述べるとともに、「この地域において経済共同体を発展させていきながら、並行して歴史問題を解決することが可能だ。日本はドイツに見習って、歴史問題に対する認識と姿勢を変えるべきだ」と熱弁をふるった。このあとに登壇した日本の海部俊樹元首相が「日韓交流の歴史には、江戸時代の朝鮮通信使のような歴史もある。未来志向の日韓関係を創っていこう」と呼びかけたのは、タイムリーであった。27日に東京で海部さんにお会いしたので、そのときに聞いたら、やはり「ノ・ムヒョン発言が後ろ向きすぎると思ったので、前向きにということで、急遽予定原稿を変えて、朝鮮通信使に言及したのだ」と仰っていた。
私自身は「東アジア共同体構築を進めてゆく上で、標識(beacon) が必要だ。それはたんなる『共通の利益』を超える『共通の価値』でなければならない。欧州ではそれは『欧州を再び戦場にするな』という合い言葉であったが、東アジアでもお互いの「尊敬」と「信頼」を育て、既成事実として『不戦共同体』の実態をまず創り出す必要がある。そうすれば、自ずと『共同体』の実態もあとについてくるであろう」との基調報告を行った。私が演壇を降りると、会場にいたフィリピンのフィデル・ラモス元大統領が駆け寄ってきて「標識 (beacon) という言葉は初めて聞いた。よいアイデアで、同感だ」と握手を求めてきた。大統領とは早速名刺を交換し、今後メールで連絡を取り合うことになったが、これもこの会議に出席した成果の一つであった。
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