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2020-09-15 00:00
(連載2)自動車産業の中国依存というリスク
倉西 雅子
政治学者
上述した日本国の貿易統計を見れば分かるように、世界経済が低迷する中、今日の日本国の貿易黒字は、中国頼りとなりつつあります。おそらく、中国の自動車市場にあって自国企業が最も高いシェアを誇るドイツも、同様のはずです。言い換えますと、中国が販売不振に苦しむ自動車メーカーの前に最大の‘バイヤー’として登場することで、日本国政府を含め、自由主義国の政府が反中強硬策に流れることを防ごうとしているとも解釈できます(尤も、2019年のデータによれば、日本の自動車輸出相手国第一はアメリカであり、その輸出額は中国の凡そ5倍…)。
そして、半導体部門における製造装置等の日本国の対中輸出の増加については、それが、中国による半導体の国産化政策の一環であることが一目瞭然です。対中貿易制裁を強めるアメリカに対して、中国は、現在15%程の半導体自給率を高めるべく、国策として半導体の国内増産に邁進しています。「中国製造2025」で掲げた自給率70%を達成し、‘チップ・ウォー’とも称される対米半導体戦争に打ち勝ち、そして、仮に対米戦争に踏み切った場合にハイテク戦争を勝ち抜くには、半導体の国産化は不可避なのです。
幾つかの貿易統計から自動車部門と半導体部門の二つの領域における中国の戦略を読み取るとしますと、日本国は目下危うい立場にあります。日本国の主力産業である自動車産業を中国に‘人質’にとられた上に、半導体部門における対中協力により、同盟国であるアメリカの信頼を損なうリスクがあるからです。仮に、アメリカに、日本国が中国陣営に与したと誤解された場合、日本製品はアメリカ市場から締め出されたり、中国の巻き添えとなって国際基軸通貨、即ち、米ドルへのアクセスで圧力を受けたりするかもしれません。
このように考えますと、日本国政府は、内需の振興のみならず、貿易における自動車産業依存からの脱却を図り、中国以外の市場を対象とした輸出産業の多様化に努めると共に、半導体関連の輸出については、アメリカと同レベルの規制を課すべきなのではないでしょうか。貿易統計の改善はそれ自体、喜ばしいことですが、それを手放しに喜ぶのではなく、裏に潜む問題から目をそらさないことも大事なことだと思うのです。(おわり)
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