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2020-08-26 00:00
(連載2)中国の野心が対米戦争を招く
加藤 成一
元弁護士
これらの米国の決意表明が意味するところは、少なくとも、今後、尖閣諸島や台湾に対する中国による不法な武力侵攻があれば、米国は躊躇なく介入するということである。中国がこのシグナルを軽視すればいずれ「米中戦争」が惹起される公算が大きい。国際法上、中国は「侵略戦争」、米国は「防衛戦争」ないし「自衛戦争」と評価されるであろう。
さて、中国人民解放軍の軍備については、近年、強力な対艦ミサイルにより米軍の空母・艦船に対する攻撃力が著しく向上しているとの指摘がある。いわゆる「接近阻止・領域拒否」戦略である。しかし、米軍が保有する多数の強力な通常兵器(攻撃型原子力潜水艦のバージニア級、航続距離2200㎞のF-35ステルス戦闘機、ミサイル迎撃能力に優れたイージス艦のズムウォルト級、各種高性能ミサイルなどの目立った主力兵器だけでなくその運用に不可欠な無人偵察爆撃機、高性能偵察衛星などの周辺装備も充実し、レーザー・電磁波・サイバー攻撃など新時代の能力も取得している)、米軍の優れた宇宙航空電子戦略により、なおも十分に対応が可能と言われている。
米中の軍備について一例を紹介したが、これに限らず、現在の米中両国の核戦力を含む総合的な軍事力を比較すれば、質量ともに米国が勝っているのは、中国自身も認める事実である。中国には短期的な優勢はあり得ても、中・長期になれば勝算はないということである。とはいえ、米国は、尖閣諸島及び台湾の維持が確実であれば、それ以上の北京、上海など中国本土への攻撃の必要性は低い。そして、中国も、米国本土やハワイを攻撃して米国と全面戦争になることは望まず、「核心的利益」と称する所謂「第一列島線」内の尖閣諸島や台湾の奪取を当面は狙っているにとどまる。すなわち、実質的にはバッファ・ゾーンを巡る争いとなり、米中全面戦争に発展する確率は高くないと筆者は考えている。また、仮に、日本が平和安全法制に基づき「存立危機事態」と認め、米軍の後方支援をはじめとして武力行使をするとなれば、尖閣諸島や台湾に近い沖縄米軍基地は重要な対中戦略拠点となる。対して、同盟国を持たない中国は、日本や台湾個々に対しては優位であるとしても、実際に紛争になれば一国でそれに米国を加えた軍事力と衝突することになり、その軍事的負担はさらに重くなるであろう。
2015年、オバマ大統領(当時)は「トウキユディデスの罠」を引き合いに出し、習近平国家主席に自制を促した。グレアム・アリソン教授も2017年、日経新聞の取材に対して米中がスパルタとアテネにならないためには積極的な対話が必要だと述べている。アテネが好戦的な振る舞いの末にどのような運命をたどったのか、歴史に学ぶことは多いはずだ。(おわり)
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