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2020-08-21 00:00
‘首相化’する菅官房長官と‘ポスト安倍’
倉西 雅子
政治学者
議院内閣制は民主的制度の一種ではあるものの、大統領制のように公選制ではないために、必ずしも国民の信を得ているわけではありません。このため、国民が望んでいない人物が首相の座に就くこともあったのですが、最近の日本国の政治を見ておりますと、別のリスクも見られるようになりました。それは、官義偉官房長官による首相の職権の‘乗っ取り’という問題です。
「『ポスト安倍』に菅官房長官が急浮上する事情」(8月4日、東洋経済オンライン)は、安倍首相の気力低下が著しく、代わって菅官房長官が陣頭指揮を執っていると報じました。首相であっても、自宅からオンラインで執務することはできるはずです。安倍首相は健康体のはずですので、首相の‘巣ごもり’状態の説明には多くの国民が首を傾げるのですが、何よりも警戒すべきは、いつの間にか、日本国の首相の職権が、国会はおろか、国民の合意もなく別の人物に掌握されてしまう事態です。同記事は、この事態を、当然のことのような書きぶりをしていますが、これは民主主義を危うくしているようにも思われます。同官房長官は‘影の首相’とも称されてはきたのですが、今や‘主従’の関係が逆転してしまっているかのようなのです。
そして、菅官房長官に関して警戒を要する点は、同氏が中国と親しい関係にあることです。先日も、台湾の民主主義の父とも言える李登輝氏の逝去に際し、‘一つの中国’を主張する中国への配慮から葬儀への日本国の特使の派遣について「予定はない」と述べています。中国による台湾併合を認めかねないリスクのある発言であると共に、長きにわたり日本国を懸命に擁護してきた李登輝氏に対してあまりにも恩知らずな態度でもあります。二階幹事長、公明党、今井首相補佐官と共に、菅官房長官は日本国の政界にあって親中勢力の一角を成しているのです。同官房長官が今にあって‘ポスト安倍’の候補者として再浮上しているのも、中国には都合が良いでしょう。‘ポスト安倍’については、同記事を含めて大半のマスメディアは、△◆派が○○氏を支持しているといった自民党内の派閥力学や多数派形成に関する情報を報じてはいますが、国民の意向については殆ど関心を払っていません。そして、菅官房長官が臨時国会の開催や今秋における衆議院議員の解散を否定するのも、現状を維持した方が、存分に首相職権を行使できるからなのでしょう。
議院内閣制の欠陥が表に現れた形ともなるのですが、そうであるからこそ、この欠陥を是正するために、民主主義の原点に返り、国民に‘ポスト安倍’を選択する機会が与えられるべきなのではないでしょうか。安倍首相は、心身の不調から自ら職務遂行が難しいと判断したならば潔く辞職すべきしょうし、解散総選挙に至った場合、各立候補者とも、自らが支持する‘ポスト安倍の’候補者を有権者の前に明らかにすれば、有権者は、望む首相候補を推す候補者を選ることで望ましくない首相がその座に就くことを避けやすくなるでしょう(自民党からの立候補者であっても、候補者自身を含め、それぞれの‘ポスト安倍’が当時の総裁と違ってもよい…)。次期総選挙は、主権者たる国民が次期首相を選ぶ‘ポスト安倍選挙’とすべきではないかと思うのです。
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