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2020-07-13 00:00
親中際立つ二階氏に求められる説明責任
加藤 成一
元弁護士
コロナ禍に隠れ、今や尖閣諸島周辺海域は大変危険で極めて深刻な事態となっている。当該海域に中国海警局の武装公船が連日侵入し、傍若無人の示威行動を強め、5月上旬には領海侵入の上に、日本漁船を数日にわたって追尾し、公然と主権侵害を行った。中国政府の意図は、尖閣諸島に対する日本の「実効支配」を排除して、中国の「実効支配」を確立し、尖閣諸島を「奪取」すること以外にはない。
尖閣諸島は1895年に日本政府の閣議決定で正式に日本領土に編入された「日本固有の領土」(国際法上の「先占」)である。戦前は200人を超える日本人が居住し、鰹節の製造などを行い「実効支配」をしてきた。中国政府が領有権を主張し始めたのは、国連の調査で付近海域に石油埋蔵の可能性が指摘された1971年以後のことに過ぎず、「実効支配」もしていない。したがって、中国政府には国際法上の法的根拠がなく、日本政府から国際司法裁判所に提訴されれば、敗訴が確実である。
そのことを中国政府は百も承知であるからこそ、敗訴が確実の国際法によってではなく、近年核戦力を含め増強著しい軍事力によって「尖閣問題」の決着を図ろうとしている。繰り返される領海侵入は、日米安保条約5条による米軍の介入を避けつつ日本から「実効支配」を奪い取り、自国の「実効支配」を確立することを狙ってのことであろう。日米安保条約5条で、日本国の施政(「実効支配」)の下にある領域に限り日米共同防衛を行うと規定されていることを中国政府は熟知しているのである。
現在、「実効支配」を狙う中国公船の度重なる理不尽な領海侵犯により、「日本固有の領土」である尖閣諸島が極めて深刻な事態となっている。中国政府の最高指導者である習近平氏と太いパイプを築いたとされる自民党の二階俊博幹事長は、上記のパイプを生かし習近平氏に抗議の申し入れをすべきである。ところが、それにも拘らず、与党で対中において最も通じるはずの二階俊博幹事長が抗議の申し入れをした形跡は全くない。いやしくも、日本の「国益」を背負う政権与党の幹事長であり、習近平氏と太いパイプを持つ二階氏がなぜ抗議もせずに沈黙するのか、なぜ抗議ができないのか。抗議をしないということ自体が誤ったメッセージを中国に送ってしまいかねない。近時の二階幹事長の発言から読み取れることは極めて慎重な対中姿勢であり、残念ながら中国に強い意志を示すことは期待できない。であれば、全国民に自民党として抗議をしないことの意義を説明しなければならない。その説明責任が与党第一党の幹事長にはあるはずである。
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