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2020-07-10 00:00
日本の海を潜航する中国艦に何も感じないのか
宇田川 敬介
作家・ジャーナリスト
通常、ある国の領海を外国船舶が通航する際には、沿岸国の平和、秩序または安全を害しないこと(無害通航)が国際法によって義務付けられる。逆に言えば、無害通航であれば、潜水艦であろうとなんであろうと外国の了解を通行でき、これを「無害通航権」という。一方、派生した権利として、「通過通航権」がある。継続的かつ迅速な通過を行うことを条件として、国際海峡を自由に航行および上空飛行できる権利である。この権利は、軍用・民間用を問わず、すべての外国船舶・航空機に与えられており、潜水艦に関しても、海面上の航行(浮上)および国旗の掲揚は義務付けられていない。押さえておきたいことは、「国際海峡ではない領海においては、無害通航権は主張できるものの、通過通行権は主張できない」ということである。そのうえで、日本における国際海峡は5つある。1977年(昭和52年)に定められた日本における領海法で特定海域として海峡の一部を公海にしたものであり、通過通航制度は導入されていない。したがって国際海峡とされている宗谷海峡・津軽海峡・対馬海峡東水道・対馬海峡西水道・大隅海峡の5つの海峡は国連海洋法条約上で定義される国際海峡とはみなされない。また、当然に尖閣諸島近海は全く入っていない。
それを踏まえて、河野太郎防衛相が2020年6月23日の記者会見で、18日から20日にかけて鹿児島県の接続水域を潜航した潜水艦について「中国のものであると推定している」と述べたことを考えてほしい。つまり、日本の領海内において、中国の潜水艦が「潜航」つまり「作戦行動」を行っていたのである。国際法上は、江の島沖や東京湾などの海底に中国が勝手に潜水艦を潜らせて貨物船を狙っているのか情報をとっているのか、作戦行動をしていたのと同じようなものである、といえば危機感が伝わるであろうか。
中国は安保理常任理事国にもかかわらず、国連憲章第2条4項にある「武力による威嚇又は武力の行使を(中略)慎まなければならない」すなわち領土問題などを含め、武力の威嚇または行使によって問題を解決してはならないという大国の持つべき分別を失っているのである。河野大臣の「現在の自由主義的な国際秩序では、武力や強制による一方的な現状変更は許されないと思う。もしそれをしようとする国があれば、国際社会はそれを阻止するために立ち上がる必要がある」という発言は、このような国連憲章や国際条約を踏まえてされている点で非常に説得力があり、国際社会へのアピールとして意義深い行いだ。
他方で、日本のマスコミや野党の人々は、なぜ中国に対して何の抗議も行わないのであろうか。単純に、国連憲章や国際条約違反を許容するということ、つまり「国際秩序を乱す行為を許し、中国の違法な支配を是認する」ということなのであろうか。そのようなことを許すことがかつて第二次世界大戦につながった教訓を思い起こさないのであろうか。このように世論を喚起しようと情報を発信する防衛当局の意図を我々はよく解釈すべきでもある。
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