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2020-06-24 00:00
食糧安全保障からみた中国の脆弱性
倉西 雅子
政治学者
コロナ禍のみならず、香港への国家安全法の施行問題により、中国の孤立が深まっております。所謂‘マスク外交’も、その背後の意図を疑われています。逆風が吹き荒れる中、中国は、孤立回避策として日本国に秋波を送っているようにも見受けられます。一方、日本国側でも、二階幹事長や公明党等の親中派の政治家、並びに、中国市場から利益を得ている民間企業は、国民世論を無視してでも、中国陣営への接近を望むかもしれません。しかし、日本国は、自由、民主主義、法の支配といった諸価値を尊重する国家であり、基本的な価値観からして違います。その上で、価値観だけでなく安全保障上も、日本の中国陣営入りが成り立たない重要な理由があります。
今般の新型コロナウイルス禍で明らかとなった点は、マスクや防護服といった医療物資を中国に依存するリスクです。実際に、医療物資の一大生産国であった中国が一時的にではあれマスク等の輸出を禁止したため、日本国を含めて世界各国で深刻な品不足が生じ、パニック状態に陥りました。こうしたコロナ禍で発生した出来事は、有事に際して予測される経済封鎖の危機を示唆しています。逆に、マスクや医療物資の大量生産・大量輸出で見せたその高い生産力から、輸入を考慮して中国と組むべきと考える人もあるかもしれませんが、中国は石油の世界最大の輸入国でもあり、レアアースを別とすれば、戦時の戦略物資、並びに、生産に要する鉱物資源を自給できるわけでもないため、日中が一蓮托生になればなんとかなるわけでもないのです。
それでは、食糧はどうでしょうか。2013年末から中国は、食糧不足を背景として従来の「95%の食料自給率の維持」の原則を転換し、農産物の輸入拡大に転じています。この結果、中国は、コメやムギ等の主食となる穀物は凡そ自給しているとはいえ、大豆については既に13%程度にまで自給率が低下し、その大半を輸入に頼るようになりました(主たる輸入先はブラジル、アメリカ、アルゼンチン…)。近年、食糧自給率の低い日本国からも農産物を輸入するに至ったように、14憶の人口を抱える中国は、国民の生活水準の一般的な向上と都市人口の増加も相まって世界最大の食糧輸入国となったのです。目下、米中両国間にあって大豆の輸出入の行方が注目を集めていますが、有事に際して両国間の大豆取引が遮断された場合、不利となるのは中国側となりましょう。アメリカが太平洋を海上封鎖すれば、中国は、伝統的な家庭料理さえ食することさえ難しくなるのです。
このことは、仮に日本のパートナーが米国から中国にシフトした場合、有事に際して日中両国とも食糧難となる可能性を示しています。つまり、食糧安全保障の観点から見ても、中国に接近する手は成り立たないのです。日本国民が飢餓に苦しむ状況に至っても、‘同盟国’である中国からの食糧支援は望み薄ということです。食糧安全保障という一面のみから見るという仮定ですら、中国との接近を優先することは最悪の選択となるのです。
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