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2020-06-17 00:00
(連載1)領土交渉で「ロシアが大幅な譲歩」は誤報
袴田 茂樹
CEAC有識者議員/青学・新潟県立大学名誉教授
安倍首相が5月27日に、鈴木宗男議員の薦めにより、5月9日から6月24日に延期されたロシアの第2次大戦の戦勝記念日に出席する可能性が報じられた(日経5.27)。同日の露紙『独立新聞』もそれを報じた。首相官邸がその記念日に首相が出席することの異様さをほとんど理解していないとの強い懸念を抱いた。実際には、首相訪露は見送るとのことなので、それを論じるのは止める。ただ、関連したことを一言述べておきたい。
露側は「第2次大戦の結果北方4島は露領になった。それを認めるのが平和条約交渉の前提で平和条約締結と領土問題は無関係」とかつての日露合意を真っ向から否定する愚弄的な主張をしている。またプーチン氏は「終戦記念日」を、10年前に決めた9月2日からソ連時代の「対日戦勝記念日」の9月3日に戻すと決定した。この日は中国も「日本軍国主義と独ファシズムに中露が協力して勝利した日」として、共同の祝日としていた。西側主要国の首脳が欠席する中、プーチン氏、習近平氏(恐らく出席)と共に安倍首相が6月24日の戦勝記念日に出席すると、露側の論理を認めたと見られるか、日本の卑屈な対露姿勢が世界に示される。
日露の領土交渉に関して、わが国の政治家やメディアの間で、なぜ根拠のない期待論や楽観論が何時までも根強いのかが私にとって長年解けない謎である。この5月23日に、ロシア通のある日本人記者から、次のようなメールを受け取った。「共同通信が特ダネとして北方領土での日露共同経済活動を巡り、ロシアが大幅な譲歩』という記事を配信するが、管轄権を文書に明記しないだけで実際にはロシア法を運用するに違いなく、誤報、虚報に近い。」 23日の共同は以下の記事を配信している。「日ロ両政府が協議している北方領土での共同経済活動を巡り、ロシア側が北方領土で日露どちらの法律を適用するかという『管轄権問題』の棚上げを提案していることが23日分かった。北方4島の領有を主張し、共同経済活動は『ロシア法に基づき行う』よう求めていた従来の立場からの大幅な譲歩である。……日ロが管轄権棚上げによる妥協で合意できれば、領土問題を巡る信頼醸成措置と双方が位置付ける共同活動が前進する可能性がある。……ロシア側は両政府が1998年に締結した4島周辺海域における日本漁船の『安全操業協定』を例に、管轄権問題に一切触れず棚上げして、共同経済活動の法的枠組みを作ることが可能との立場を示した。」
私も、ロシア側が管轄権問題を文書に書かないというだけで譲歩したと受け取るべきとは考えない。「4島周辺海域における日本漁船の『安全操業協定』を例に、管轄権問題に一切触れず棚上げして、共同経済活動の法的枠組みを作ることが可能」との解釈には、2つ問題がある。①周辺海域の「安全操業協定」には管轄権問題が書かれていないがゆえに、実際にはむしろ4島周辺海域の取り締まりはロシア法の下でロシア側が行っている。書かれていないということと、その問題を棚上げしたということは、全く別問題なのである。②海上なら日露両国の漁船や人の接触は比較的少ないが(それでも①のような問題が起きる)、島の上で日本人が経済活動を行うとすれば、交通事故や盗難、傷害事件、詐欺・契約違反事件などはすぐにも生じる可能性がある。その場合、ロシア法以外の法規で対処するのをロシア側が認めることは到底考えられない。したがって、「ロシア側の従来の立場からの大幅な譲歩」と解釈するのは、私も誤報、虚報に近いと考える。(つづく)
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