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2020-05-30 00:00
(連載1)香港は21世紀の火薬庫となるのか
岡本 裕明
海外事業経営者
中国の国会、全人代で香港国家安全法が提案され、圧倒的多数の賛成で採択されました。今後、詰めの作業を経て、新法が香港で採択されるものと思われます。林鄭月娥長官は香港の安定のために歓迎すると述べており、香港は再び大荒れの状態になる可能性があります。具体的には市民団体が主導する形で大規模デモを起こし、西側諸国がそれを支援する形になるとみています。中国側は昨年、香港の民主化運動に対して十分な対応が取れなかったことを反省し、今回の全人代での決議を踏まえ、強硬な対策を打ち出す可能性はありそうです。昨年のデモ、コロナ禍で傷んだ香港が今後、更にどのようなことになるのか、極めて厳しい情勢が予想されます。
そもそも香港国家安全法とは何か、であります。香港は中国本土とは別の憲法ともいえる香港特別行政区基本法(香港基本法)に基づき、特別区としての運営をしています。この香港基本法に疑義が生じた場合の解釈については中国の全人代常務委員会が行うこととなっています。この委員会は今回の場合、4月26日から29日にかけて開催されており、全人代の大綱はここで決まっているといってよいでしょう。そして当然ながら香港基本法の解釈権を持つ全人代常務委員会が民主化の動きを抑え込むための対策も決議したものと思われます。
今回の問題は香港基本法の第23条の「国家安全法の制定」がキーであります。条文の粗訳は「香港特別行政区は、反逆行為を禁止し、国を分裂させ、反乱を扇動し、中央人民政府を覆し、国の秘密を盗み、外国の政治組織またはグループが香港特別行政区で政治活動を行うことを禁止する」とあります。また第22条に「香港特別行政区は、国の統一を損なう、または中央人民政府を破壊するいかなる行動も禁止するように立法化しなければならない」とあるのです。
つまり、香港は中国本土に逆らってはならず、そのためには国家安全法を定めることができるというわけです。ところがこれは極度の民主化への制限につながるばかりか、一国二制度が完全に葬り去られることになります。かつて何度もこの国家安全法の制定を試みたものの激しい反対で制定されたことはありません。そこで林鄭長官の発言、「今後、全人代常務委員会と共に、早期の立法完成に取り組んでいく。国家安全の維持という職責を果たして、香港が『一国二制度』の実施による長期的な繁栄と安定を確保していく」と述べるに至るのです。この場合の影響は計り知れないものがあり、天安門事件のような事件すら起こりうる事態になります。(つづく)
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