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2007-06-21 00:00
連載投稿(2)北朝鮮問題をめぐる各国の思惑
武貞秀士
防衛省防衛研究所統括研究官
北朝鮮は米国との「関係正常化」を目指し、現金を引き出したくはなかったのである。米朝関係正常化の第一歩は、金融制裁の全面中止である。いったん銀行経由で、凍結を解除された資金の送金をすることで、金融制裁の一部を解除することが可能になる。そのあとは、全面解除にもってゆく考えだろうが、その前であっても、米朝関係の正常化を視野に入れた米朝協議と6カ国協議再開の雰囲気ができあがると北朝鮮は読んでいた。6カ国協議が再開されれば、平和体制構築の問題、米国の朝鮮半島問題への軍事的役割の停止の議論が可能になるという計算が北朝鮮にあるだろう。
北朝鮮が金融制裁の全面解除を目指すかぎり、米国の厳しい姿勢に直面して、米朝関係改善のスピードは遅くなるし、6カ国協議は進まないので、一見矛盾する政策である。しかし、マカオの銀行から現金を引き出してしまうと北朝鮮に対する制裁措置のもとでの行動になるので、制裁措置に従ったことになり、今後、銀行からの送金活動の道は閉ざされる。マカオの銀行口座からの送金の前例ができれば、「アリの穴も・・」ということで、金融制裁全面解除のきっかけになるという思惑である。
このことは、韓国の食糧支援を含む人道支援再開と、鉄道連結などの北朝鮮支援事業への追い風になる。北朝鮮への人道支援を韓国独自の北朝鮮政策の目玉と考える韓国は、バンコ・デルタ・アジアの口座問題が、米国の金融制裁の一部緩和という形で解決することを望んでいたもうひとつの国家であった。米朝関係改善が遅れても、韓国からの支援が再開されるので、北朝鮮の損失はそれほどでもない。
資金の送金が完了して、5メガワットの原子炉のシャットダウンが終われば、この時点で6カ国協議は再開に向けて動きだすだろうから、6カ国協議のホスト役の中国としては、バンコ・デルタ・アジアの資金問題が、「米国の金融制裁一部緩和」という形で解決することは望ましい展開である。中国銀行経由の送金ではなく、ロシアの銀行経由の送金であるので、送金業務に関して、中国は米国政府と協議をする必要はないことも、中国にとっては歓迎すべきことだっただろう。ロシア政府は米財務省に対し、受け入れ先のロシアの銀行に法的措置をとらないとの確約を再度求めた。ロシアは、送金問題で制裁を受けないことを確認したうえで、送金問題の最終解決で決定的役割を果たし、北朝鮮問題で一定の役割を果たしたことを歓迎しているだろう。(つづく)
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