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2020-05-14 00:00
(連載2)中国のマスク外交とドイツの相対的外交
宇田川 敬介
作家・ジャーナリスト
とはいえ、ドイツはこれまでそれほど声を上げていたわけではない。2016年、中国はドイツにとって最大の貿易相手国となった。以来、メルケル首相は公式の場で、「中国はドイツにとって一番大切な国」とはっきりと言うほど、親中姿勢を鮮明にしてきた。トランプ大統領が中国に対する関税を設けたときも「保護主義貿易」と主張してアメリカを攻撃したのはドイツのメルケルである。
古い話をすれば、先の大戦で日本とドイツは同盟関係にあったにもかかわらず、ドイツは日本と中華民国双方を支援するなど、見方によっては一貫性がないともとれる外交をする性質を持つ。ドイツの外交というのは、歴史的に見て「相対的」である。ドイツにとってはヨーロッパ諸国との相対性がとりわけ重要であり、例えば、「これは仮の話であるが」ドイツがイギリスと対立するとなれば、そのイギリスと対立するイランとドイツは蜜月となり、そのイランと仲の良い中国とも仲良くするというように、ヨーロッパ内部の相対関係において自分の外交を判断する癖がある。
そのような危ういバランスのとり方では、つまづくとそのままその国を孤立化させることになる。実際に第一次・第二次世界大戦ではドイツは開戦前の時点ですでに国際情勢のなかで劣勢に立たされた。「いいとこどりをしているつもりでいつも残り物ばかりをつなぎ合わせている外交」というような感じであろうか。ドイツは今回の新型コロナウイルスをめぐってリバランスした結果、対抗する相手はかつて「一番大切な国」中国ということになった。今回はそのような「相対的外交の一つの姿」ということがいえよう。
ドイツの日刊紙ビルトは4月17日、「全世界で流行っている中国最大の輸出ヒット商品はコロナ」と主張して「(中国の)政府と科学者はコロナが人から人へ感染するという事実をかなり前から知っていたが、世の中に知らせなかった」と批判した。このような国内の声に押される形で、ドイツがバランスを取り直そうと動いたということになる。とはいえ、ドイツは裏で中国政府と事前に連絡を取っているともいわれる。その辺がまたドイツらしいところなのである。(おわり)
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