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2020-04-27 00:00
1バレル-35ドルの衝撃
岡本 裕明
海外事業経営者
先日の原油価格相場がバレルあたりマイナス35ドルを超えたというのは、さすが驚きの事態でありました。原油の1バレルとは約159リッターですので、皆さんが仮に昨日、1バレル原油を買うと35ドルくれるというあり得ない話となりました。勿論、これはテクニカルな事態で一般の方がそれに踊らされる必要もないし、ガソリン価格がゼロ円になるわけでもありません。原油は毎月決済があります。これを限月というのですが、4月21日は5月限月の決済日でありました。通常、原油取引は限月が近くなると極端に出来高が細ります。昨日もほとんど商いがない中で真空地帯を崩落したというのが理由になります。
つまり、株式市場で例えると誰でも知っている大企業の株価が出来高を伴って暴落したわけではなく、ほとんど誰も知らない発行株数が極小の会社に悪材料が出て株価が崩落するようなものであります。ただし、今回の問題の根本は需要と供給のバランスが悪いという点であります。そのため、原油の貯蔵庫が足りないという問題が発生しつつあります。原油の受け渡し場所であるオクラホマ州のクッシングにある貯蔵施設が足りないとされていますが、いくつかの情報を見る限り70%台半ばであと数週間は行けるかもしれません。(22日にクッシングの備蓄量の週刊速報値が発表されます。)また他の貯蔵施設にはまだ余裕があるところもあるとされています。よって非常に専門的で実務的な問題が相場に反映され、マイナス金額の取引に注目が集まったということかと思います。では、この需給は解消するのか、であります。
メディアの評価は低いのですが、トランプ大統領が介在し、サウジとロシアのOPEC+を通じた5月からの日量970万バレルの減産決定はそれなりに意味はあったと考えています。あのときは翌日にG20エネルギー相会議を行い、OPECの枠組みにとらわれず産油国が皆で協調するという史上初のアプローチとなりました。では、なぜインパクトがなかったかといえば具体的にOPEC外の国々、特にアメリカ、カナダ、ブラジルなどから具体的減産幅が示されなかったからです。これは市場の制度が違うため、市場価格の自動調整機能を重視するアメリカ、カナダでは政府が民間企業に調整を強いることが難しいわけです。ところが見方を変えれば企業側は産出すればするほど赤字になるわけで産油量は自然と細るというシナリオが前提になるはずです。たしか4月末に向けて北米内ではジョージア州あたりが中心となって一定の取り決めなり対策を行う検討が進んでおり、実質的にはサウジ、ロシア分を合わせ日量1500万バレルの減産は視野に入ってくるとみています(もちろん、これでも減産幅は足りません)。
仮に5-6月ぐらいから徐々に需要が増えてきたとしてギリギリでバランスがとれたとしても、在庫が適正水準まで落ちるには半年ぐらいはかかるのかもしれません(一つの目安としてはクッシングの貯蔵量が4000万バレル程度まで下がる水準です)。その点からすれば昨日の原油価格の崩落は一時的な現象にせよ、しばらくは荒い動きを伴いながら時間をかけてじわっと戻す可能性が高いのかもしれません。ただし、繰り返すようですが、原油取引市場はボリュームが小さくテクニカルなのでちょっとしたニュースで大きく反応しますから、価格の振れ幅にことさら敏感になる意味はないと思います。もっと本質的な意味は今回のコロナにかかわらず、世の中のトレンドとして原油の消費量が減ってきている点でしょうか?サウジなどはそれ故に脱原油を掲げ太陽光発電もやり、また投資部門ではソフトバンクを介して次の目玉を探していたといえます。70年代の2度の石油ショックを知っている者としては隔世の感であります。
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