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2020-04-18 00:00
(連載2)小康社会と共産党支配の正統性のために
加藤 隆則
汕頭大学長江新聞與伝播学院教授
中国では全国でオンラインの授業が始まっている。混乱も多いが、それを教訓として改善し、模範的な授業の実例も共有が進んでいる。学内メディアの学生記者が、教師にオンラインで取材をし、授業の現状をリポートしている。いたるところで、困難の中から学ぼうとする姿勢が強く感じられる。科学技術振興の側面からみれば、今回のオンライン授業が5Gを含めたインターネット環境の有効活用を促進していることは間違いない。AIの活用にも追い風になるだろう。
一方、浮き彫りになった農村地域の劣悪なネット環境は、いずれ政府の重点政策になるに違いない。というのも、習近平政権が2020年、確約していることの核心が農村にあるからだ。2016年からの第13次5か年計画で国民の一人当たり可処分所得を2010年比で倍増させ、なお数百万人いる貧困人口を解消しなければならない。これは、いわゆる「二つの百年」目標――2021年の中国共産党創立100年までに小康(ややゆとりのある)社会を全面的に築き、2049年の建国100年までに近代的社会主義強国となる――を実現させるためのステップとなる最重要課題である。カギを握るのは春の全国人民代表大会で、延期されたものの、何としても責任ある態度を明確に示さなければならない。わかりやすく言えば、共産党政権の誕生を担った農民が今や社会の最下層に追いやられ、格差社会の中で不当、不公正な扱いを受けている現状を改め、腐りきった党幹部にかつての初心を思い出させ、党支配の正統性を再び取り戻す任務である。習近平が香港デモのさなかでも、足繁く農村を視察して回っているのはそのためだ。共産党政権を打ち立てた革命世代の二代目「紅二代」から授かった使命でもある。
感染問題が長引き、十分な医療を受けられない貧困層の生活、健康、生命が脅かされる状態になれば、その時こそ、政権の是非が問われる。だからこそ多少の荒療治をしてでも、それを食い止めなければならない。習近平はそこをみているし、心ある中国ウォッチャーもやはりそこに目を向けなければならない。
民主主義のシステムでは、政治家への評価は選挙によって下される。失策や失言をしても、再選されればみそぎを済ませたことになる。だが、官僚機構と人脈を通じた複雑な選抜システムを生き抜いてきた中国の指導者は、失策はすなわち失脚に直結する。敗者復活がないからこそ、政治生命をかけた激しい政治闘争が起きる。過去には暗殺クーデター計画まで明らかになっている。その緊張感を理解できなければ、中国政治を理解できない。(おわり)
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