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2007-06-16 00:00
連載投稿(2)期待される「安倍提言」の戦略的掘り下げ
廣野良吉
成蹊大学名誉教授
そこで来年のG8においては、安部総理は、これらの原則を踏まえた意味ある具体的提案をすることが期待されており、そこでは、どうしても、世界的長期削減目標である2050年までに36億炭素トンを、先進国対途上国別、国別ないし地域別、さらに産業別というように、何らかの形での削減目標の個別化に言及せざるを得ないであろう。京都議定書の策定過程で激論されたように、この世界的長期削減目標の配分という課題は今後直面する最も困難なものであろう。「各国の事情に配慮した柔軟かつ多様性のある枠組み」は言うは易くも、実現には多くの障害が待ち構えている。
安倍総理は柔軟かつ多様性のある多くの選択肢を用意して、来年のG8洞爺湖サミットに臨むことが期待されている。本年6月のEU環境大臣会議での「2050年までに1990年レベル(58億炭素トン)のGHG年間排出量を半減、即ち29億炭素トンへ削減」という提案への配慮は勿論のこと、従来からGHG排出量削減の国別義務付けには反対してきた米国政府が新たに世界的長期目標の設定を目標として今秋主催する、先進諸国や新興経済諸国かつ大排出国15カ国が参加する国際会議での議論と本年12月にインドネシアで開催されるUNFCC下のCOP13での議論をも念頭に置いた選択肢を用意することは、かなり正確な世界的情報収集と各国政府の政策に配慮した「戦略性」を求められることは必至である。
途上国が新しい国際的な枠組み作りに参加し、削減義務を負うためには、安倍提案でいう「長期的で、ある程度の規模をもった新たな資金メカニズム」の導入が不可欠であることに異論はないが、対象途上国のGHG年間排出量の大きさ(2006年の世界全体のエネルギー起源二酸化炭素排出量のうち、中国は18%、インド4%、韓国2%、その他の途上国が23%=合計47%)を考えると、日本一国では賄いきれないことは明白であり、先進諸国、移行経済諸国、大量排出進行経済諸国、国際機関の共同出資、さらには民間大企業が参加する多国間基金の設立が不可避であろう。
さらに、GDP単位当たりの二酸化炭素排出量が日本を初めとする先進諸国に比べて、異常に高いこれら移行経済諸国や新興経済諸国(2004年現在日本を1とすると、ロシア18.9、中国11.2、インド7.7、韓国3.1等)の状況を考えると、「省エネ等の技術を活かし、環境保全と経済発展とを両立する」(美しい星50)対途上国支援が不可欠であることは当然であるが、技術移転と同様に重要なことは、これらの国々の国民一般による環境保全意識の共有、環境教育の徹底とライフ・スタイル変革の必要性を訴えることであろう。安倍総理提唱の「美しい星50」の国民運動をわが国だけでなく、途上国全体で展開することが必要不可欠である。以上の各点について、将来に希望を持てる意欲的でかつ実現可能な、さらに世界から集まる15カ国の首脳が賛同できる具体的な安倍提言を洞爺湖サミットで期待したい。(おわり)
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