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2020-04-07 00:00
(連載1)西側のメガネだけから見ては中国の強靭さを見誤る
加藤 隆則
汕頭大学長江新聞與伝播学院教授
中国は、56の民族からなる14憶人が、それぞれ激しく自己主張をしている社会である。秦の始皇帝以来、厳格な法治にはアレルギーがあり、「合情合理」という言葉に表れているように、法家の説く理よりも儒家の説く情を重んじる。ルールは与えられるものでなく、自分たちで作っていくものだという発想で成り立っている。それにしても、ここまで徹底した管理には圧倒させられる。10数年の間、中国に住みながらつぶさに観察してきたが、中央の指示による統制はかなり徹底されている。それを隅々にまで拡大できたのは2012年末に発足した習近平政権7年間の実績にほかならない。徹底した反腐敗キャンペーン、不正幹部の摘発、イデオロギー統制によって、緩んだ官僚機構の綱紀が粛正され、末端にまで習近平の指示、意向が浸透する体制ができあがった。
権力集中に功罪があることは言うまでもない。日本メディアの報道は、その表面的な批判に安住してしまうので、いつまでも真相に届かない。独裁の強化を批判する人たちはまず、胡錦涛時代、権力の分散によって腐敗が深刻化し、党指導部内のクーデターさえ計画されていたことに思いを致す必要がある。当時、領土問題で日中関係が極度に悪化した背景にも、こうした熾烈な政治闘争があったことは衆目が一致している。前政権に対する反省から習近平による権力の掌握、集中がスタートしている。胡錦涛政権時代、権力の分散による「不作為の10年」を嘆いていた知識人たちが、今度は手のひらを返したように権力の集中を批判している。私はこういうご都合主義には付き合わない。
これもまた、多くの人たちがすでに忘れてしまっているが、習近平のバックには、共産党政権の正統を担う革命二世代、いわゆる「紅二代」の支持があることは忘れてならない。両親たちの世代が築いた共産党政権が、内部の腐敗によって分裂、崩壊の窮地に追い込まれた、との危機感が共有されている。個々の政策について立場の違いはあるが、党の支配を堅持するという原則論では一致している。内部分裂は党の崩壊につながるとの認識が、歴史的教訓として残されている。中国社会においては最も発言力のあるグループだ。
2018年の中国憲法改正によって、国家主席について任期2期10年の上限が取り払われたことは記憶に新しい。西側メディアには悪評高いが、権威の強化にとっては極めて大きな意味を持つ。「あと数年で引退」が自明となった途端、権力が空洞化し、綱紀が緩み始めることは、過去の反腐敗キャンペーンが示している。独裁=悪という単純な図式だけでは、中国政治、中国社会の真相を正しく理解することはできない。もし習近平政権が脆弱だったら、と想像してみるのも頭の体操にはよいだろう。あらゆる問題が政権内の政治闘争とリンクし、例えば、米中貿易摩擦は取り返しのつかない泥沼に入り込んでいたかも知れない。新型コロナウイルス感染の対策でもより大きな混乱が起きていた可能性がある。今回、日本からの支援が美談としてもてはやされたが、それもかき消され、公式訪日の相談をするどころではなかったに違いない。巨大な隣国の政情が不安定であれば、日本が大きな影響を受けるのは必至である。(つづく)
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