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2020-03-30 00:00
国防生産法適用、市民的自由は守られるのか
大井 幸子
国際金融アナリスト
26日(木)、米国の新規失業保険申請件数が328万件と過去最多を記録した。マンハッタンでは商店やレストランが閉鎖され、無産階級の人たちは行き場を失い、ウォール街の連中はハンプトンやマーサスヴィンヤードのサマーハウスに逃避している。大都市では新型コロナウイルスがオーバーシュート(爆発的感染拡大)し、マンハッタンのジャビッツセンターは野戦病院さながら、ロサンジェルス沖には海軍の病院船が待機している。現場では今、人工呼吸器が不足している。米国は戦時下の生産体制に入ったのである。
FT記事(28日付)によると、トランプ大統領は、ゼネラルモーターズ(GM)に対して、人工呼吸器を生産するように命じた。1950年代の国防生産法(DPA)の復活(現政権では初適用)である。GMはこの国家の緊急事態に対応し、過去に解雇した労働組合の労働者1000人を雇い、フル稼働で人工呼吸器を生産する。トランプ大統領から見れば、米国に製造業の生産拠点を戻し、サプライチェーンを復活させるチャンスだ。
一方、このDPAを根拠に、民間企業に対して大統領が何を優先的に生産すべきかを強制する権限があるのだろうか。DPAに無制限の強制力はないし、合衆国憲法に対して違法性はあると思う。だが、現実として、米国は戦時下のごとく現状を認識し、総力戦の体制になりつつある。そして、国家安全保障上の重大局面「ウイルス世界大戦」に対処するため、連邦政府があらゆる経済活動を支配し、FRBが無制限の資金提供をし、よって金融システムは国家権力にコントロールされる。戦時下ともなれば国家にあらゆる権力が一時集中するのはやむを得ないととしても、大きな懸念が残る。たとえ議会が認めたとしても、一時的で済むだろうか、「終戦」すればまた元通りになるだろうか、ということだ。そうでなければ、資本主義経済は壊れ、市民的自由は永遠に奪われてしまう。
他方、日本では日銀によるETF購入が権利落ち日でもある本日30日も行われた。日銀は2000億円以上の買い入れで1万9千円台の大台を守ったが、年度末31日に向けて、この株価水準を維持したいところだ。しかし、4月以降、「自粛+自主規制=強制」的に、商店やレストランが営業短縮に動けば、消費は急激に冷え込む。派遣社員は仕事に行けなければ生活できないので、マンハッタンと同じような現象が起こるだろう。株価下落は4、5月と、まだまだ続くと見ておいた方がよさそうだ。
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