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2020-03-25 00:00
(連載2)失われた日本人の信用と非常事態法
袴田 茂樹
CEAC有識者議員/新潟県立大学教授
当時、クルーズ船の最終検査で陰性と判断された人たちは、電車やバス、自家用車などで帰宅した。彼らと接触した一般市民の数は相当数になる。乗船者の人権が配慮された一方で、では、今日の日本の法の下では、ウイルスに曝露する危険を被った多くの一般市民たちの人権はどう保護されるのか。当然、新型コロナウイルスのような自然災害には不可抗力の面もあるが、今回は政治家や国民の怠慢や医療体制の不備とか関係機関・組織の初動の遅れだけでなく、法の面から考えても明らかに人災とも言える危険に国民は晒されている。
前述の法学者西修氏と最近懇談する機会があったので、今回のウイルス事件で厚生労働省の言う「人権侵害」云々について尋ねた。曰く、「今日のわが国の法制度では、そう言わざるを得ない」ということのようだ。懇談の結論として言えることは、「今後日本は、さらに深刻な非常事態に当面する可能性はいくらでもあるので、冷静にそのことを認識してそれに対応できる憲法や法律、つまり非常事態法を真剣に考えざるを得ない」ということだ。
東大のアジア問題専門家の松田康弘教授によると、今回の事件によってアジア人、特に台湾人の対日イメージが一変したと言う。恐らくこういうことだろう。台湾では、植民地時代の日本人は台湾において衛生面だけでなく教育、治安、行政などあらゆる面で規律と秩序を普及させた。したがって、日本人こそ危機管理に最もきちんと対応できる国民と見られていたが、今回の事件で日本および日本人のイメージが全く変わった。「アメリカでは、ダイヤモンド・プリンセス号を下船しても14日間は入国を認めない措置をとった。先にチャーター機で帰国した乗客も14日間は隔離される。カナダやオーストラリアなど他国も同様で、つまりは日本を信用していないことになる」(東洋経済Online 2.28)。
安倍首相は2月27日に全国の小、中、高に対して、3月2日から春休み迄、休校を要請した。しかしこれはあくまで要請であって法的な拘束力はない。そのため、最終的にはほぼ全ての公立学校が休校したものの、当初は一部自治体や教育委員会がこの要請に従わない動きを見せた。首相は以降、新型コロナウイルス特措法など感染拡大防止の法案を早急に準備に動いたが、文字通り泥縄式である。このような逐次的な対処に汲々としているのは、もっと一般的な形での非常事態に備える法体制が整っていないからだ。それがまたわが国の国際的信頼を失う結果ともなった。日本および日本人が信用を取り戻さないと、東京オリンピックの開催だけでなく、日本の経済も日本の信用そのものさえも危うくなるだろう。(おわり)
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