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2020-03-21 00:00
(連載2)新型コロナウイルスを巡りぶり返す日韓対立
斎藤 直樹
山梨県立大学教授
文在寅の対応には韓国内で日々、増大する感のある感染者数に国民の厳しい目が向けられる中で、その矛先を日本に向けるという意図が感じられた。いずれにせよ、日韓関係はまたしても厳しい対立状況に逆戻りした感がある。日本が中国からの入国制限を発表したことにより、中国からの入国制限を行わないのは事実上、韓国だけになったと言えよう。文在寅の姿勢で特異であるのは中国と日本に対する対照的な姿勢である。目くじらを立てるかのように対抗意識を剥き出し日本への対抗措置と思われる行動に打って出る一方、中国に対し何ら実効的な措置を講じない文在寅の姿勢は誠に奇異に映らざるをえない。また日本に対する韓国側の批判には的を射ていない指摘もみられる。そうした指摘によると、日本国内の感染者数がそれほど激増していない事由はPCR検査が十分に実施されていないことによる。韓国並みの徹底的な検査が実施されれば、日本の感染者数は激増するであろうと憶測する見方まで韓国の一部では出ている。
こうした日韓対立と並行して起きているのが、南北間の駆け引きである。文在寅が3月1日に行った「三・一独立運動101周年大統領記念辞」の中で、文在寅は南北間で防疫協力を行う用意があると金正恩に呼びかけた。文在寅曰く、「北韓とも保健分野における共同協力がなされることを願います。人間と家畜の感染症拡散に南北が共に対応し、接境地域の災害や韓半島における気候変動に共同で対処するとき、われわれ同胞の暮らしはより安全になるはずです」これに手のひらを返したように、金正恩指導部は3月2日に韓国を射程に捉える新型放射砲の試射を強行した。文在寅側が誠に遺憾であると抗議すると、3日に金正恩の妹の金与正(キム・ヨジョン)ははしたない言葉を並べ文在寅政権を激しく愚弄する内容の声明を発した。ところが、翌日の4日に金正恩から文在寅に親書が送付された。その内容は新型コロナウイルスの感染拡大阻止に取り組む韓国民への慰労であったと青瓦台が伝えた。そうすると、今度は文在寅が金正恩に感謝の意を示す親書を送り返したという。これに対し、9日に金正恩指導部はまたしても新型放射砲の試射を強行した。
日頃から文在寅を軽くあしらった感のある金正恩が上述の通り、3月4日に文在寅に親書を送付した背景には、新型コロナウイルスの防疫への支援を韓国側に要請したとの見方がある。上述のとおり、北朝鮮への感染拡大を殊の外重大視した金正恩は1月の終わりの段階で中朝国境を封鎖した。しかし北朝鮮の貿易総額の9割以上を占める中国との貿易を遮断することは北朝鮮にとって自らに経済制裁を科すようなものである。これまでの国連安保理事会決議に基づく経済制裁に加え、中朝貿易を遮断することは二重の経済制裁となって跳ね返ってくるであろう。しかも厳しい封鎖措置が講じられているはずであるものの、北朝鮮国内ではかなりの数の感染者が出ているとみられている。表向き上、北朝鮮国内では未だに感染者はいないとしているが、3月9日までに『労働新聞』は9930人を隔離したと伝えた。しかも北朝鮮の医療体制が不十分であることを踏まえると、ウイルス感染の拡大は金正恩体制に深刻な危機を引き起こしかねない。食料などの価格も急騰しているという推測がある。こうした状況が続くことがあれば、北朝鮮国民の不満は日々高まっているとみられる。
この間、文在寅政権が金正恩指導部に防疫支援を行う用意があるとしたのに対し、軍事挑発を平然と強行し、それに遺憾の意を韓国側が伝えると、これに散々暴言を金正恩指導部は浴びせている。それでも金正恩側に対し防疫支援を文在寅は準備しているという。他方、習近平指導部が韓国人の入国を制限する行動に出た今も、文在寅は未だに韓国への中国人の入国に厳格な制限を課していない。他方、安倍内閣が韓国人の入国制限を発表すると、猛然と反発し対抗措置を講じる文在寅の姿勢はまさしく「反日・離米・従北・親中」としばしば揶揄される複雑に捻じれた心理状態を表したものであろう。こうした文在寅政権の一連の言動は誠に理解に苦しむ。4月15日に予定されている韓国総選挙で是が非でも勝利を収めるべく支持票を確保するために文在寅が意識的に日本に猛反発してみせているのか、それとも文在寅を突き動かしている確信的信念がそうさせているのか判断がつきかねるところである。(おわり)
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