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2020-03-16 00:00
最近の中国バッシングについて
中山 太郎
非営利団体非常勤職員
『文芸春秋』4月号は、中国習近平および日本政府の新型コロナウイルスをめぐる不手際への非難轟轟だ。特に中国は、自国の新型コロナウイルス騒ぎがひと段落したとして、中国の専制政治の対応への賛辞や、果てはイタリアなどへ医療団を送る声明を出し、今や世界のコロナ対策への救世主気取りだ。以前から異様な姿の中国嫌いが多い日本での評判はますます悪い。ある人は、「自分のところから発生させ世界へ拡散させ大変な迷惑をかけているのに何たることだ。盗人猛々しいとはこのことだ」とまで述べている。
日本社会は時として、片方に流れが傾くと、皆それに乗り反対意見を許容しなくなる。外交では、一筆書きは危険なのだ。常にグレーゾーンを残すことも必要だ。戦国末期の豊臣、徳川の争いの際の信州の真田家のごとく、双方に保険を掛けておくことも、国の生存のためには必要なのだ。欧米の学者の多くは、中国について火星人の台頭のごとく異世界からの役者ととらえる向きが多い。背景の文化についての何の知識もないからだ。
日本の立場は異なる。思い出すのは、昨年秋に東京国立博物館が展示した中国の書道家、「顔真卿展」だ。これは台湾政府が故宮博物館の秘宝を特別に日本へ貸し出し実現したものだ。野党時代の安倍総理は、祖父岸信介、父安倍晋太郎と同じく台湾への思い入れが強く関係改善に努力を重ねた。こうした深い交流から生まれたものだ。安倍政権になり、今まで男女交際の斡旋機関と間違われたりしていた日本の対台湾外交機関「交流協会」が、やっと「日本台湾交流協会」と名称も変わり正常化した。日本の中国書道への深い教養が伺われる同展示に、中国の知識人たちは狂喜した。北京では見ることの叶わぬものだとも述べていた。権力闘争の激しい中国社会を反映して、顔真卿が反乱軍との戦いで命をとした若い親族を悼む文章には、食い入るように真剣に見つめる姿が印象的だった。顔真卿自身も最後には非業の死を遂げる。
韓国についても、同『文芸春秋』に李相哲・龍谷大学教授の文章があるが、東京五輪で韓国選手団は日本への反放射能キャンペーンの一貫として選手村で食事をせず、自前の食材、コックを連れてゆくとの記事がある。おやおやだ。4月に予定される総選挙後その勝敗にかかわらず、特に負けた場合は、国内批判を逸らすために文政権は対日批判をもっと強めるとも述べておられる。最後に、平昌五輪での小平奈緒と李相花両選手の互いの健闘を称えあったシーンには、多くの韓国の国民も感動しており、多くの声なき人々は、政府の反日姿勢に冷静であると述べてもいる。明治以来日本は、脱亜入欧路線で、韓国、中国との違いを強調し、名誉白人の地位を得たりした。今の韓国、中国の姿は、かっての日本の姿の合わせ鏡でもある。しかし、コロナウイルスは、こうした差別化をあざ笑うかのように、欧米の一部には、日、中、韓排斥の動きも出ている。
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