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2007-06-15 00:00
「ハイリゲンダム・サミット」と東アジア
石垣泰司
東海大学法科大学院教授
今般成功裡に開催され、世界に大きく報道されたG8ハイリゲンダム・サミットと地域協力・地域統合、東アジアとの関連性を考えてみたい。
主要国首脳会議、いわゆるサミット会合は、周知の通り、当初は世界の重要経済問題を話し合うため市場経済、民主主義等価値を共有する西側先進国6ヶ国(仏、米、英、独、日、伊)間の最高政治指導者の対話の場として32年前に発足した。その内容、運営、準備等は、参加国間の申し合わせでことごとく各国少数者を除き厳秘とされ、関係者間でも腫れ物に触るように扱われていたことが、私の外務省勤務時代の生々しい記憶として残っている。それが、その後の発展で、今日では、サミット参加国も増え、価値を共有しているとはいいがたいロシアまで加わり、G8となった。取り上げるテーマもグロ-バルな経済、エネルギー、環境等問題のほか安全保障、地域紛争その他の政治問題をはじめ、アフリカを含む世界各地における文字通りあらゆる問題に及ぶようになった。しかも、各回のサミット行事には、G8以外の途上国諸国首脳や国際機関代表も主催国の招待により多数参加し、対話の機会を持つようになった。また、世界の報道陣が集結し、内容も細大漏らさず報じられるようになった。
今回のハイリゲンダム・サミットの全行事に東アジアから参加したのは、もとよりG8の一員たる日本のみであるが、「アウトリーチ」と呼ばれるG8との対話には東アジア・サミット・メンバーたる中国とインドも参加し、またこれら参加諸国間で個別に極めて多数の2国間会談が繰り広げられた。しかし、G8サミット自体の論議や招待された多数の途上国間の話し合いでは、発表された文書や報道によれば、主要テーマの1つとされたアフリカ地域については突っ込んだ議論が行われ、中東情勢やコソボ、アルメニア・アゼルバイジャン紛争、コロンビア問題などがとりあげられたたものの、東アジア関係については、北朝鮮の核、拉致問題がネガティブな意味合いで言及されただけであった。
G8サミットは、もとより、世界各地の地域協力を取り上げる場ではないといってしまえば、それまでであるが、同サミットには、1977年の第3回ロンドン会議から、欧州共同体(EC)代表が一貫して参加し、今次サミットにもEU代表としてバローゾ欧州委員会委員長がG8首脳と全く同格の立場で全会合に出席していることに注意する必要がある。EU代表のG8出席は、欧州におけるサミットのみならず、日本、米国、ロシアいずこの地で開催される際にも当然のこととして受け入れられている。さらに、ハイリゲンダム・サミットでは、ホストのメルケル首相は、現在のEU議長国としての立場でも発言していた。さらに、同サミットにおける対話セッションには、アフリカから実に7ヶ国(南ア、エジプト、アルジェリア、ガーナ、ナイジェリア、セネガル、エチオピア)が招待されていたが、そのうち、ガーナは、アフリカ連合(AU)議長国、またエチオピアはNEPAD(アフリカ開発新パートナーシップ)議長国としての立場であった。
このように、今回のサミットでは、いつものようにEU機構のプレゼンスが制度に確保されていたのに加え、近年地域統合の動き顕著なAUの存在感も強く感じられた。それにひきかえ、東アジア地域については、日本、中国、インドの参加の重みはそれなりにあったといえるが、いずれも個別国家としての参加であり、地域統合の動きや地域連携の意味合いはどこにも見あたらなかった。これが、東アジア地域の現状の正確な反映であろうし、明年我が国が主催する洞爺湖サミットでもこの状況が大きく変わることは先ずないであろう。
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