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2020-03-10 00:00
プーチン大統領、北方領土返還を事実上封じる憲法改正を提案
飯島 一孝
ジャーナリスト
ロシアのプーチン大統領は、政治機構の抜本的改革を柱とした憲法改正を行う方針だが、3月2日に下院議会に提案した憲法改正の改訂版では、隣接国との国境画定交渉は認めるものの、領土の割譲を目指した行為は禁止する内容となっていることが分かった。この改訂案は、北方領土問題をめぐる日本への譲歩や交渉自体を禁止することを狙ったもので、この改正案が成立すると、北方領土の日本への返還は事実上不可能になりかねない。
プーチン大統領は2024年に大統領の任期が満了となり、退任する意向を固めている。そのため、任期満了前に政治機構を改革し、実質的な院政を敷くとの見方が強い。こうした流れの中で、プーチン氏は北方領土返還に向けた行為や呼びかけを禁止する方針を打ち出したものと見られる。その一方、国境画定については認めるとしており、日本との北方領土返還交渉を国境画定に限定する狙いとも言える。
こうした考え方は、憲法改正に関する政府主催の会議に出席した俳優のマシュコフ氏が提案したもので、プーチン氏の後継者の時代になっても、北方領土返還を封じる狙いがあるとみられる。この提案についてプーチン氏は会議の場で賛成する意向を示し、専門家に具体案を検討させていた。この条項が新憲法に盛り込まれても、日本との領土交渉を「国境画定のための交渉」と言い逃れることはできる。その半面、この条項が盛り込まれた場合、議会などを中心に北方領土交渉に反対する機運が一層高まる恐れがある。プーチン政権は現在も日本側に対し、日露の国境は第二次大戦の結果、決まったものだと主張し、交渉の前提としてそれを認めるよう求めており、交渉が進展しない大きな理由になっている。
プーチン氏は憲法改正を急いでおり、改正案をできるだけ早く国民投票などに付して成立させる意向と見られる。これに対し、安倍首相は後手後手になった新型肺炎コロナウイルス対策に専念せざるを得ず、有効な手が打てない状況だ。このままでは、外交の重点事項に掲げた北方領土返還も水泡に帰す可能性が高い。
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