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2020-02-27 00:00
日本政府のAWS発注に対する4つの懸念
倉西 雅子
政治学者
米系のGAFAや中国系のBAT等による情報独占が今日問題視されるのは、情報を握る者が経済全体を支配する可能性があり、転じて政治的支配につながるリスクがあるからです。日本国政府が、各省庁に共通する基盤システムのクラウドについて、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)への発注の方針を固めたとするニュースは、一般の日本国民にとりましては不安材料となりましょう。第1の懸念は、人事や給与に関する情報の漏洩により外部者が日本国政府の全ての配置構成を一目でわかるようになる点です。例えば、漏洩した情報により外部者が自らの利益に関わる職権を有するポストを特定し働きかけるケースです。合法的なロビー活動のみならず、違法な贈収賄や、ひいては、人事権そのものに干渉する者も現れるかもしれません。
外部者によるデータ管理の懸念が第2の問題点です。文書管理を外部事業者のシステムに依存することになれば、人事に関する情報以上に重要な情報も、最悪の場合外部に筒抜けになります。もっとも、基盤以外の各省のクラウド・システムについては、アマゾンに限定せず、各省の判断に任せるとしています。しかしながら、基盤システムとは中枢システムでもありますので、各省庁レベルで機密化されている情報も、政府中枢に上がった時点で漏洩の危機に直面します。データセンターは、クラウドを提供するアマゾンの管理下にあるのでしょうから、日本国政府が情報管理の権限をアマゾンに付与したようなものです。
第3に、そもそも、アマゾンへの発注の決定プロセスがあまりにも不透明です。この件については、2月12日付の日経新聞の朝刊一面で初めて目にしたのですが、一般の国民には何らの事前の情報提供も説明もなく、ましてや、総選挙の政策綱領に挙げることもなく、アマゾンへの発注が既定路線化されています。政府クラウドの海外事業者への発注は、電電公社、水道事業の民営化に勝るとも劣らない重要な選択です。仮に、日本国の政府クラウドの分野を海外事業者に開放するならば、国民にその是非を問うべきです。
第4の指摘は、産業政策の観点です。政府は、常々日本企業のIT分野での競争力強化と底上げを訴えてきましたが、コストばかりを基準に委託事業者を決定しますと、当然に、GAFAといった規模の経済を存分に発揮できるIT大手が受注してしまいます。これでは、日本企業はIT分野において遅れをとり、大手との格差は広がるばかりです。他の諸国では既にIT大手の支配力への警戒感が強まり、各国政府共に抑制へと動いているにも拘わらず、日本国政府のみがこの‘グローバルな流れ’に逆行しているかのようなのです。外部者による支配の問題に直結しかねない政府クラウドの分野にあっては、自国主義を‘グローバル・ルール’とすべきよう訴えるべきではないかと思うのです。
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