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2007-06-12 00:00
変容するユーラシアの地政学と日本外交
滝田賢治
中央大学教授
冷戦が終結して15年以上経つのに、新たな世界秩序は明確な姿を現していない。冷戦終結をも一大契機として始動したグローバリゼーションによってもたらされた混沌とした状況の中でアメリカ中心の「一極構造論」やグローバル・ガヴァナンス論あるいは地球市民社会論などが、現れつつある、あるいは現れるべき世界秩序を説明しようとしてきた。これらの見方はそれぞれある程度、説明力をもっているものの、我々の眼前には1世紀前の「帝国主義の時代」を彷彿とさせるような国際政治の現実が展開しているのも事実である。
アジア地域では人口大国である中国・インドが技術力・経済力・軍事力を背景に政治的影響力を増大させ、究極のユーラシア国家であるロシアとともに21世紀ユーラシアの秩序形成にその政治力を利用していく可能性が高まってきている。一方アメリカはイラク戦争の泥沼化や北朝鮮・イランの核問題への対応に象徴されるように、その「覇権性」を低下させてきており、内部矛盾を孕みつつも国際政治経済におけるプレゼンスを高めてきたEUは、アメリカとは異なる中・印・露3国への政策を展開しつつある。
明確な世界秩序は現れていないものの国際政治の力学は明らかに変化しつつあり、ユーラシア地域を巡る地政学も激変していく可能性が高まっている。このような状況の中で、日米同盟を基軸とする日本外交のあり方が根本的に問われている。かって1971年7月中旬、当時のニクソン大統領は、翌2月の中国訪問をその発表の直前に日本に伝えてショックを与え、日米自動車交渉においてはワシントンの日本代表団の滞在するホテルに盗聴器をつけて情報を収集し、国連安保理常任理事国入りを希望する日本に対しては、日本ともう1カ国(=インド)ぐらいは受け入れる意向をほのめかして、実質的にはG4の戦列を分裂させようとして、実にスマートに日本の野望を打ち砕いたのである。
そして今またブッシュ政権は、「悪の枢軸」と非難した北朝鮮への態度を「コペルニクス的に」転回させつつある。「6者協議」という「再保障政策」から、欧米人が忌み嫌う「宥和政策」に転換しつつあるようである。国際反テロ戦線に組み込まれた日本は、100%アメリカにその身を預け続けていいのだろうか。同盟の特質は「相互拘束」であると言いながら、一方的にその身を拘束され、明らかに変容しつつあるユーラシアの地政学に主体的に対応することの出来ない日本でよいのであろうか。
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