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2020-01-23 00:00
台湾、韓国、イラン情勢について
中山 太郎
非営利団体非常勤職員
今回の蔡英文民進党総統の大勝の陰で、同時実施の立法委員選挙で、立ち上げた新党の惨敗で陳・前民進党総統が政界を引退する旨が報じられている。陳は民進党初の総統として、2000年から2期8年総統を務めた。2000年の半世紀に及ぶ国民党政権に終止符を打ち登場した際の現地の熱気ある空気を知るだけに感慨深いものがある。陳が登場する前の台湾の社会的状況は、李登輝国民党政権下、以前の厳しい戒厳令などが緩和され、いわゆる台湾化が進んできていた。
日本では戒厳令は100%悪と決めつける向きが多いが、知人の台湾のビジネスマンは、当時極度に治安が悪くなったので車をボロなタクシーに偽装したり、いつも胸ポケットに、日本円にすると10数万以上の現金を入れていたりと防備に大わらだった。同人によればその友人は、金を所持していなかったため、怒った強盗に片耳を切り落とされたそうだ。陳は、相手の国民党側が分裂したおかげで、40%を切る得票で当選したのだったが、今の蔡英文総統とは異なり、議会は国民党に占められ政権運営には苦労した。陳は、次の国民党政権下、汚職疑惑などで逮捕、夫人、長男、側近なども同じ運命をたどった。陳は収容所で抗議のハンガーストライキを行ったり、自殺を図ったりした。これは、韓国の政治と似たものがある。
その韓国との関係について、本e-論壇にも投稿される袴田茂樹氏が、雑誌「公研」1月号に「日韓関係悪化の真の背景」という素晴らしい論述を寄せておられる。内容は、韓国は日本帝国の消滅で独立し、独立国家としての正当性、アイデンティが不明確だった。その結果、「残酷な日本帝国時代に全国民的な反日闘争が広まりその闘争の結果独立した」という「歴史の」フィクションを作らねばならなかったというものである。傾聴に値する賢人の見方だ。米人学者は、米・イラン関係も日韓関係と同じく、歴史の囚人となっているのだと感じたと述べていた。同学者は最近イランの関係者と意見交換したが、イラン側は、確かにイランがウクライナ機を誤爆したことはバカなことだが、乗客の162名の内82名はイラン人である(ちなみに米学者によると他はカナダ人63、スエーデン人10、アフガニスタン人7、英国人3、ウクライナ人2その他乗務員)。1980年代の終わりごろ、米がイラン航空機を撃墜し、主としてほとんどがイラン人の290人が死亡したのよりよほどよい等の無茶苦茶な反論をされ、そもそも米が1950年代に民主的に選出したイラン政権を崩壊させ、シャーに交代させたのが今の関係悪化の元凶だなどとまくしたてられたそうだ。米学者は、日本人はよく大国の米や中国との関係は難しいとこぼすが、中小諸国との関係はもっと大変だと述べている。
安倍総理は、イラン、サウジなどの関係先にきめ細かく仁義を切り、ホルムズ海峡へ自衛隊機を送る。日本は、同海峡経由の石油輸入が全輸入量の8割以上の数字を占めるが、中国は同じぐらいの中近東からの輸入量だが、チャンネルの多角化で50%以下だそうだ。外交では、一見無駄と思えることでも、後から見ると一つの布石になっていることも多い。安倍・プーチン間で会合の回数だけが多く結果が出ないではないか、怪しからんとの声もあるが、忍耐強く多方面でチャンネルを保持、維持するのも労も多いが大事なことあり、会合でビビッドな情報も入るし、有事の際の大事なコンタクト先にもなるのだ。戦前に近衛政権が「蒋介石相手にせず」と大見えを切り、一時の世論の喝さいを浴びたが、折角の日中間のチャンネルを潰してしまった感のある愚は避けるべきだ。
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