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2019-12-25 00:00
「徴用工」問題の活路は民間にこそあり
伊藤 洋
山梨大学名誉教授
日韓両国に係る係争のうち、GSOMIAについては土壇場で「断絶」を回避したとは言うものの、その後に両岸から発せられる言葉は決して「解決」という代物ではない。加えて年明けには問題の発端である「徴用工問題」なるものが発火点に達する。そして、これは究極的には「歴史問題」である以上、過去のあらゆる失敗が蓄積した複雑な混合物であって、消臭剤の一吹きで簡単に消えるような代物ではない。それゆえ日韓両政府双方の知性と智慧に期待するしかないのだが、それが双方ともに薬にしたくとも存在しないのが現在の不幸の主因であった。である以上、フィランソロピー企業や文化人など民間レベルで行動を起こすしかない。
ここは先人の歴史に学ぶに限る。戦時下の中国人強制労働者への戦後補償問題を解決したときの手法である。冒頭の報道記事にある文韓国国会議長の発言の中にある『民間基金』の設立は有力な手法であろう。あれを解決した時の鹿島組(秋田花岡鉱山)、西松建設(広島県発電所建設)、三菱マテリアル(旧三菱鉱業の4鉱山)などの「智慧」に学ぶということである。韓国立法府の動きを見るに韓国国内ではそれに関係する話が出ている。「聯合ニュースは26日、韓国人元徴用工問題の解決策として韓国の文喜相(ムヒサン)国会議長が提案する基金設置に向けた法案の骨子がまとまった、と報じた。日韓両国の企業や国民の自発的な寄付金を原資に、約3000億ウォン(約277億円)規模の基金を運営する「記憶人権財団」を創設し、元徴用工ら約1500人に慰謝料を支給するという」(2019/11/27読売新聞)。
金額規模など具体的な数値の妥当性について、筆者にはそれを論ずる知識を持たないが、ここに戦前の徴用工を使役し、少なからず加害意識を持っている日本企業は積極的に参加して、政治の容喙を拒否することであろう。もはや1910年(明治43年)8月29日の「日韓併合」ら110年、戦後から70余年、日韓国交回復からすら半世紀を経過している。もうとっくに、「歴史」の中での「教訓」として時折思い出して確認し合うというレベルであるべき問題が、宿痾となって現在進行形で両国の国益を害している。かくなる上は、政治に期待せず、いな、民間の「賢人」の間で先行して事態を動かすことが重要なのだ。
ソウルからの最新の報道によれば、文喜相韓国国会議長主導の民間基金方式について韓国民世論は32.6%が賛成するのみで44.4%が反対と言い、その理由は日本企業や日本政府の責任を免罪するものだからだという。しかし、喉元に突き刺さった骨を取るには、骨を刺し合った当の政治ではなく民間で引き取る以外に方法はないのではないかと、筆者は考えるのである。
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