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2019-12-25 00:00
東南アジア某学者の内話
中山 太郎
非営利団体非常勤職員
訪日中の東南アジア某学者と懇談の機会があり、同人の述べるところをご参考まで次の通り紹介する。
「中国系住民のネットワーク」について、東南アジアで今人々が怒っているのは、中国が最近正々堂々と国内選挙に干渉してくることだ。現地駐在の外交官が、反中国的な政治家を落選させるために公然と反対派の候補者の肩を持つなどと言う事例がある。公式な場面でも、中国の国籍あるいは現地籍にかかわらず、中国系の住民に対して我々大使館がバックアップするので、どんどん申し出てくれなどと宣言したりしている。東南アジアで、カンボジア、ラオス、マレーシア、タイに合わせ100万人、シンガポールに50万人、中国は人的なネットワークをつくり彼らからの情報提供その他、地域への進出に役立てようとしている。ちなみに米には500万、カナダ100万、日本140万、EU28か国で100万人の人たちがいるとみられる。ただ、中国の上層部が理解できていないのは、今の前時代的な富国強兵、重商主義的政策をとっている中国に皆がもろ手を挙げて賛成はしていなことだ。
「台湾問題」について、来年1月の総統選挙は今の時点では、現職の反中国の民進党総統が優勢ではある。しかし、中国は以前から手を打ちつつある。2000年代初めごろより台湾の経済界、学界、科学技術部門などの専門家たちをリクルートしだしている。既にそうした人材を3000名以上集めたともいわれている。自分が接触した米の政府関係者は台湾へ先端技術を教えると中国へ筒抜けになると怒っていた。その真偽、その程度に就て自分は良く分からないが、米台離間を狙い、米側にそうしたサスピシャスな念を抱かさせるだけでも、中国にとり成功なのだ。今米が悩んでいる産業空洞化も、台湾に起こすことにもつながる。習近平の政策の目玉の中台統一を睨んでの手を打ちつつあるのだ。米が文句を言ってはいるが、そういう米の企業もIT業界をはじめとして、中国の巨大市場をにらんで、中国との関係構築に秘かに励んでいることはご存知の通りだ。しかし、かつて80年代、90年代にココム違反だとして、日本企業などが血祭りにあげられたような事態は今後覚悟する必要がありそうだ。
「香港問題」について、天安門事件当時のような、解放軍の投入はまずないだろう。(小生から、大陸の人たちは今の香港の人たちへ冷めた見方をしていると述べる人が多いがとの問いに)その通り。知識人を含め、皆冷たい。香港人は、本土より良い生活をしながら、不満を持つなど怪しからんというわけだ。人々は冷めた見方だが、政府は極めて重要視している。巷間言われるように、中国企業の資金調達、証券取引の海外との交渉の際、常に香港をかましている。中国がまだ弱い金融面での各種ノウハウはまだ、香港依存だ。それに米の報道機関が暴いたように、香港の主な不動産の7割は、大陸系企業が購入していて、その多くに中国上層部の要人たちが絡んでいる。中国は、トランプ政権は選挙を控え対中激突にまではもっていかないだろうと見ている。香港でのデモの人数も6月ごろの200万から、上下はあるが最近では多くて80万人と減少しつつある。学生たちの過激な行動が社会への反発を生み少しづつ鎮静化していくと見ている。あまり、メディアが取り上げていないが、香港は、五輪と同じくAPECのメンバーでもある。中国はこれを制裁からの逃げ場として使っている。だから、表向きは言葉で激しく対米批判をしても、実際の行動は控えめだ。
「日米関係」について、日本での新天皇の即位の式典に米は、格下の運輸長官を派遣した。中国が国家副主席の王岐山を派遣したのとは差がある。これを、米の最近の日本の中国への接近への不満の表れと見るか、弾劾騒動で米政権としては、それどころではなかったと見るか意見が分かれるところだが、自分は前者と見る。安倍政権は条件付きとはいえ、「一帯一路」への協力を表明している。これに関して、プーチン・ロシアがこれに署名していなことはロシアと中国の蜜月が言われている中で、留意しておく必要がありそうだ。明春には、日本は習近平を国賓として迎える。東南アジア諸国も、日本と同じく、経済取引は米より、中国のほうが多い、米との関係も大事だが、怖い、時に違和感がある行動をとるこの中国との経済関係接触も食うためには維持してゆきたいというのが本音だ。我々は、これからの日本の動きを注目して見ている。
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