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2019-12-24 00:00
(連載2)金正恩からのクリスマスプレゼント
斎藤 直樹
山梨県立大学教授
いずれにしても、ICBM発射実験を強行することがあれば、核実験ほどではないにしてもトランプの逆鱗に触れることは間違いない。しかもウクライナ疑惑を巡り米下院での弾劾訴追を受けているトランプは、ICBM発射実験の強行を逆手にとるかのように自身に向けられた批判を金正恩に振り向けようとするであろう。そうした中で、プレゼントとして有力視されるのが人工衛星打上げを偽装した長距離弾道ミサイルの発射実験であろう。安保理事会でこれまで採択された対北朝鮮経済制裁決議に対する明らかな違反となるとは言え、中国やロシアが追加制裁決議案の採択の賛成に回るかどうかは不透明である。場合によっては追加制裁決議の採択が回避できるかもしれなし、採択されるとしても採択まで審議が相当難航することが予想されよう。こうしたことから、プレゼントは人工衛星打上げに名を借りた弾道ミサイル発射実験であると目されるのである。とは言え、同発射実験がトランプ政権を著しく刺激することには変わりはない。しかも政権だけでなく米議会の北朝鮮への風当たりは一段と厳しくなっている。
この2年間、金正恩を厚遇してきた感のあるトランプに対する批判が米議会で渦巻いていることを斟酌すると、トランプは自身に降りかかる火の粉を払うべく一気に強硬策に転じる可能性がある。この可能性を物語るかのように、12月21日に「国防権限法」が成立した。これにより、対北朝鮮経済制裁の強化だけでなく軍事的対応を同政権は視野に入れている感がある。同時に、慌てるかのようにトランプは習近平国家主席、安部首相と立て続けに電話会談を行っている。こうしたことを踏まえると、金正恩のクリスマスプレゼントは人工衛星打上げを偽装した長距離弾道ミサイルの発射実験ということになろう。これに対し、トランプは安保理事会での追加経済制裁決議の採択を急ぐことが想定される。しかも追加経済制裁決議案は2017年12月に採択された決議2397より一段と厳しくなることが確実視される。
すなわち、ガソリンなど石油精製品の大幅削減にとどまらず、原油そのものの供給停止に踏み込む可能性がある。もしも採択されれば、かつてないほどの衝撃を金正恩体制に与えるであろう。金正恩にとってまさしく「油断」となりかねない。原油の供給停止措置はこれまで安保理事会でトランプ政権が求めてきたが、事ある度に習近平指導部の反対にあった経緯がある。北朝鮮は必要とする石油の9割以上を中国からの輸入に依存していることから、人工衛星打上げが強行された際の習近平の判断が注視される。遅かれ早かれ安保理事会での追加制裁決議の採択が俎上に載るであろう。その際、中国とロシアが反対に回る可能性があるとはいえ、金正恩を一層追い詰めることは確実である。トランプ政権とすれば、安保理事会での追加経済制裁決議の採択に辿り着くことができれば、してやったりというところであろう。現在の段階では、同政権にとって軍事的選択肢の発動はまだまだ牽制の色合いが強い。実際に現時点まで、米軍は北朝鮮の核ミサイル関連施設に対する空爆に向けた準備を整えているわけではない。
それにしても、不可解なのは金正恩が自ら期限を切り、大規模な軍事挑発をちらつかせトランプに大幅な譲歩を突きつけたものの、トランプがそれに応じない中で、自ら切った期限に縛られようとしていることである。強く出れば相手は引き下がるという戦法はトランプには通じないことを自信過剰で傲慢な金正恩は未だに学習していないようである。このことは2019年2月末のハノイでの第二回米朝首脳会談で露呈した通りである。今回もそうであろう。トランプ側が講じるであろう対応に対し金正恩は明らかな計算違いをしていると思えてならない。そして一人独裁体制であるがゆえに、一度独裁者が決断することになれば、周囲の人間はだれ一人として金正恩を止められないことを見事に示している。この結果、最も回避されるべき選択肢を金正恩は自ら選ぼうとしている感がある。まさしく墓穴を金正恩は掘ろうとしているのである。(おわり)
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