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2019-12-23 00:00
(連載1)金正恩からのクリスマスプレゼント
斎藤 直樹
山梨県立大学教授
2019年10月上旬にストックホルムでの米朝実務者協議が決裂して以降、米朝関係の膠着状態がしばらく続いていたが、12月に入り朝鮮半島情勢の緊張は急速に高まっている。このことは12月上旬に金正恩指導部がトランプ大統領にクリスマスプレゼントを贈るとし、その中身はトランプ側の対応に依拠すると恫喝したことに始まる。12月3日にリ・テソン北朝鮮外務次官は「わが国は・・最大限の忍耐をもって最善を尽くしてきた」とした上で、「このあとどうするかは米国が選択することであり、クリスマスプレゼントに何を選ぶかは米国次第だ」と言い放った。
振り返ると、2019年4月12日の北朝鮮最高人民会議において金正恩朝鮮労働党委員長は「・・今年末までは米国の勇断を待つ」と断言した。このことから明らかな通り、金正恩は年内と期限を切り非核化交渉の継続か、それとも大規模軍事衝突をも辞さない覚悟で軍事挑発に打って出ると、トランプに凄んだのである。その後、トランプ側から経済制裁の全面解除を示唆する譲歩が一向に行われていない状況の下で、12月を迎えた。そこで金正恩が持ち出した脅しがクリスマスプレゼントであった。クリスマスプレゼントというからには12月25日までに何かを強行するということであろう。当初、これは脅しに過ぎないと思われたが、12月7日に続き13日に東倉里でICBMのロケットエンジンの試験が行われたことに加え、22日に朝鮮労働党・中央委員会拡大会議が急遽開催されたことを踏まえると、トランプへのクリスマスプレゼント贈呈はカウントダウンに入った感がある。
この間、ビーガン北朝鮮担当特別代表が韓国、日本、中国と立て続けに訪問し関係者と意見交換を行うと共に、北朝鮮側との接触を試みた。接触の条件として北朝鮮側はビーガンに経済制裁の解除を要求したとされるが、ビーガンが応じないことにより、結局接触は実現しなかった。こうしていたずらに時間が過ぎたまま、トランプへプレゼントを贈る期限となるクリスマスが近づいている。金正恩は一体何をトランプへのクリスマスプレゼントとするのか。様々な憶測や推測が流れているが、おそらく人工衛星打上げを偽装した長距離弾道ミサイルの発射実験ではないかとみられる。クリスマスプレゼントとして第7回核実験となる地下核実験を断行する可能性は考えにくい。これは金正恩にとって今後に残しておきたい選択肢であろう。2018年に非核化措置の一環として爆破されたはずの豊渓里の核実験場であるが、外部者によって検証されなかったこともあり、核実験に使用できるとみられている。とは言え、核実験は豊渓里からさほど離れていない中国の習近平国家主席やロシアのプーチン大統領を著しく挑発することにもなる点を踏まえると、この選択肢の可能性は極めて低いと思われる。
クリスマスプレゼントとしてICBM発射実験も考えられないわけではない。もし断行されれば、2017年11月29日に強行された「火星15」型ICBMの発射実験以来となるが、核実験ほどではないにしても外部世界から猛烈な非難に曝されることは間違いないであろう。2017年11月のICBM発射実験に強い衝撃を受けたトランプ政権は軍事的選択肢の発動を真剣に検討した経緯がある。当時、マクマスター大統領補佐官が「ほとんど時間が残されていない」と名台詞を残したことは有名である。トランプ政権は北朝鮮領内の核ミサイル関連施設への空爆の可否を考慮したが、結局、この選択肢の発動は見送られた。他方、12月22日に国連安保理事会で石油精製品の大幅削減を盛り込んだ決議2397が採択され実施に移されたことにより、金正恩指導部が追い詰められたことは周知のとおりである。苦境を脱すべく金正恩指導部は北朝鮮の周辺海域において「瀬取り」と表現される海上違法行為を大々的に繰り広げているが、陸続きの周辺諸国の関与が疑われている次第である。(つづく)
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