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2007-06-04 00:00
東アジア共同体は重層的アプローチで
山澤逸平
一橋大学名誉教授
5月末に東京で開催された日経『アジアの未来』での議論を読んだ感想を書きたい。この会議は東アジアの現・前の首脳ないしは主要閣僚が参加して、それぞれ東アジアの将来について自国の関心を発言する恒例の行事になってきた。議論は毎年着実に進んでいる。もう共同体の是非論ではなく、どう実現するか、その中で自国の発展がいかに確保されるか、具体的に発言している。
安倍総理は環境問題に焦点を絞って、世界全体の温暖化ガス排出量を2050年までに半減することを提案した。エネルギーの確保と環境保全を両立させる持続可能な発展、アジア通貨危機の再来を防ぐための通貨政策の協調、安全保障のための高度の政治協力の提案が続いた。
共同体構築の方向では依然まちまちである。アブドラ・マレーシア首相はASEANプラス3が既定路線だとするが、二階前経済産業相は豪・ニュージーランド・インドを加えた16カ国での推進を譲らない。米国のマハラックAPEC担当大使は米国も含めたアジア太平洋FTA(FTAAP)を主張する。しかしアロヨ・フィリッピン大統領が言うように、東アジアでの協力は重層的アプローチでよい。
協力機構としての制度化がなされていない東アジアでは、多くの分野での協力の進み方は、それぞれの協力ニーズの緊急性とリーダーシップの巧拙次第である。当面はそれぞれに適した協力ネットワークを動かして行く重層的アプローチで行くので良い。日本としては16カ国路線に固執するより、環境でも、自由化でも、通貨協力でも、巧みなリーダーシップがとれるよう、日本自体のカードを強化してゆくことだろう。どうせ日本は農業保護のアキレス腱で、EPAでもWTOでも思い切った踏切りができないと見透かされるような現状では、何を言っても影響力は減退するばかりではないか。
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