ホーム
新規
投稿
検索
検索
お問合わせ
本文を修正後、投稿パスワードを入力し、「確認画面を表示する」ボタンをクリックして下さい。
2019-12-13 00:00
(連載2)ブーゲンビル独立問題:東西対立の視座
宇田川 敬介
作家・ジャーナリスト
ちなみに、日本人にとっては、ブーゲンビル島は、連合艦隊司令長官の山本五十六戦死(殉職)の地として有名で、ニューギニア島を始めとする南太平洋の多くの戦地では日本軍の多くの遺跡や遺骨が今なお残っている。この地だけでなく、実は日本軍が統治し撤退した土地というのは、なぜか内戦や戦争が多く存在する。日本軍によって一時的に支配を崩された欧米列強は再占領するために第二次世界大戦のあと軍をまわしたため、現地民と紛争になることが多くあった。とはいえ、現地民も常に一枚岩であったとは限らず、脱植民地化のあとも、外部的な要因、例えば経済支援などが入って、内戦などが起きることもあった。特に、部族が異なる場合、もともとの王族などと、独立期の英雄の間で調整ができずに、独立問題を抱えることが少なくなかった。
この問題が近年まであったのがブーゲンビル島だ。「外部的要因」つまり、「中国やアメリカといった21世紀の覇権国」による経済的支援や、地下資源(海底資源を含む)などの問題がブーゲンビル島に発生したのである。ブーゲンビルは資源が豊富であるため、ブーゲンビル自治政府がその権益を完全にパプア・ニューギニア政府から継承した上で独立すれば、中国や米国、オーストラリアが南太平洋で繰り広げる覇権争いに新たな火種を生む可能性があるのだ。
つまり、現在のブーゲンビル独立問題は単なる国家主権問題が主要なテーマなのではなく、地下資源問題、国家インフラ問題、そしてニューギニア島そのものの地政学的価値を巡る問題などが複雑に絡んでいるのである。その文脈で、中国は「地下資源」だけではなく「軍港」としての魅力を現地に感じており、南太平洋上に人民解放軍を展開する航空基地と潜水艦基地を作ることを目指している。旧日本軍が、ガダルカナル島に航空基地を作りアメリカの空母を食い止めようとした史実が示唆する通り、中国はこの地に対米戦略の拠点を作ることを狙っているのである。
当然にその中には「共産主義ナショナリズム」と「資本主義グローバリズム」という経済中心の国境の考え方が大きく左右し、そしてその経済の中心になるものが覇権国となるということになるのではなかろうか。まさに、米中貿易戦争が行われる最中にその背後ではこのような問題が進行しているのである。ブーゲンビルを巡っては同地域の独立が見込まれているが、その結果がどのような事態につながっていくのかは注目すべき大きな問題である。(おわり)
投稿パスワード
本人確認のため投稿時のパスワードを入力して下さい。
パスワードをお忘れの方は
こちら
からお問い合わせください
確認画面を表示する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会