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2007-06-01 00:00
日米中首脳会談の定例化を検討せよ
塩田康夫
大学院生
日本国憲法が還暦を迎えたさる5月3日の憲法記念日に、『朝日新聞』は「社説21提言・日本の新戦略」と題し、8ページにわたって21の社説を一挙に掲載した。わが国のとるべき国家戦略について、21の視点から具体的に提言したものであるが、なかでも「11.アジア新秩序:日米中の首脳会談を定例化しよう」という提言は今後の東アジアの地域秩序を考える上でたいそう興味ぶかく、以下、この提言につき思うところを述べることにしたい。
この提言の前提には「米中の軸が太くなっていくのは、少なくとも長期的には間違いないだろう」との認識がある。その上で、日本は米中両国といかに付き合っていくかを考えなければならないというわけである。裏を返せば日本はもはや東アジアにおける優位を失ったということになろうか。
従来の日米中の三者関係は、いわばシーソー・ゲームのようなもので、中国は日米接近による自国の封じ込めを警戒し、アメリカは日中接近による自国のアジア地域への影響力低下を警戒し、そして日本は米中の接近を”Japan-Passing”として憂うという相互不信の連鎖を引き起こしていた。このようなモデルは、日本の域内における地位低下によってバランスを崩しかねない。そこで日本としてはこの三者関係を「相互に依存し公正に競争しあう安定した構造」へと進化させる必要があるということになる。
戦後60年を振り返っても、わが国は米中両国と等しく緊密な関係を保つ必要があり、事実そうするべく努力してきた。米国の圧倒的な存在感と、いよいよその存在感を増しつつある中国の狭間で、わが国は今後さらに両国との関係を有効に保つ必要がある。仮に「日本の域内における地位低下」が事実であるとするならば、わが国は今まで以上に日米友好と日中友好とが互いに矛盾するものではないことを対外的に説得力をもって示す必要があるはずである。
その意味で、東アジアにおける自国の優位を所与のものとして行動することに慣れてきたわが国が、発想を切り替え「現実主義」的に米中両国との中長期的な共存のシナリオを模索することは得策であろう。「日米中の首脳会談を定例化」はその象徴として有効に機能することが期待されるのではないだろうか。求められるのはリアルな複眼的思考である。
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