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2019-11-27 00:00
(連載2)独仏のズレに見るEU地域統合の課題
宇田川 敬介
作家・ジャーナリスト
しかし、いつの間にかEUはそのような基本姿勢を忘れてしまい、なぜかEU内の主導権争いで地域統合が妨げられる事態に陥っている。基本的に「国家という枠組みを超えて連合する」ということは、その現象だけを考えれば「世界共産主義革命」といっても過言ではない。そのため、国家の枠組みを超え且つ共産主義・社会主義とは異なる機構を目指すに当たっての性格付けが今一つできていないことが、ネックとなってきた。
いくつか論点はあるのだが、その一つが今回ニュースになった「安全保障」の考え方である。国家を超えるのであれば、「EU軍」のみが存在する。例えば、EUの秩序を乱すものは「軍」ではなく「警察」で対処する。他方、例えばドイツ人が、EU軍に所属して、例えばハンガリーやスペインの危機を救うために命を危険にさらさなければならない。同様に、ドイツ人のEU軍人が、ドイツの国内で治安出動をしたら、同じドイツ人と戦わなければならない。
軍まで統合するのではなく各国が軍をそれぞれに持つ現状のままであれば、そのような国籍を超えた軍を持つことによる特有の状況に軍人が曝される可能性は少ない。もちろん軍事分野においてのみでも論点はこれだけに済まないのであるが、端的に例を上げたように、EUにとって「各国の軍隊を残すのか、あるいはEUとしてまとめた軍隊一つにするのか」ということは重要なテーマだ。そして軍隊に関する欧州諸国の問題意識がNATOのあり方に関する問題意識として表出されたのが今回のニュースである。フランスは、NATOの状態に危惧を示し「脳死」という言葉を使い、ドイツはそれに対する認識の違いから「安全保障の礎石」という表現をした。ニュースとしては、NATOの話であるが、本質的にはEUの地域統合に一石を投じる話なのである。
そもそもEUには理念的な問題があり、「国家連合か?連合国家か?」ということについて充分にはコンセンサスがない。そのようなことは「棚上げ」にしてきたツケがこのように出てきている。このようなズレはEUの様々な活動に出てきているのだが、その不協和音をどのように処理し昇華させていくのか。そしてその時にイギリスは、ドイツは、フランスは、どうするのか。アジアの地域統合は、全く欧州とは状況も段階も異なるが、この問題の本質的な課題が日本にうまく伝わればアジアの将来像に資するのかもしれない。(おわり)
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