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2019-11-20 00:00
(連載2)国民性と物価の関係
岡本 裕明
海外事業経営者
ハイパーインフレは、戦争や国家の破綻など国全体が不安定になる特殊要因が引き金になります。かつてのドイツ、ロシア、アルゼンチン、近年のベネズエラなどは好例でしょう。また、ブラジルの場合は物価スライド制という特殊要因がその引き金で国民がそれに慣らされた影響が大きかったのかもしれません。ですがこれらハイパーインフレの要因も局地的なものを除き、改善されてきました。一因として、グローバル経済による平準化があるのだろうと考えています。潤沢な資金と低い金利をベースに安い人件費と物価を求めて企業は「新興国の開拓者」となりました。また、資源関係の事業者はいまや自分たちがプライスリーダーではないことを認識しているし、OPECが十分に機能しなくなったことも周知の事実です。
ではバーナンキ元FRB議長の言うようにヘリコプターからお金をばら撒けば本当に物価が上がるのか、といえば一時的なお祭りで消費を覚醒させるのですが、長期には続かないことが分かっています。むしろ、リーマンショック後、中国が国内で57兆円規模のばら撒きをしたことは当時、世界でヒーロー扱いされましたが、その後、中国経済は泥沼の中でもがく羽目になりました。いわゆるばら撒きの副作用であります。
その一方で北米はなぜ、日欧よりやや高めの金利を維持できるのでしょうか?ヒントは歴史がない点にあるように感じます。つまり、古くなったら壊して作り直すという文化、そして新しいものには常に付加価値がありその費用を消費者に転嫁する仕組みがある点でしょうか?日欧は歴史的背景から何でもかんでも壊して新しいものを作るというのは難しいところがあります。またそれに対する価値観の評価も違います。例えば、薄汚れたラーメン店が一杯600円で提供していたものを、店を改装してきれいになった途端、750円になったとします。それに消費者はお金を払うかという議論です。
少なくとも日本ではネガティブな意見が多そうですが、北米にはそれに価値を見出す人が案外多いのです。とすれば日欧に共通して言えるのは財布のひもが固いということかもしれません。欧州は価値あるものを長く使うことを美徳としていました。とすれば金利がどうなろうが、人々の価値観は揺らがない、だから2%がどうしたということなのかもしれません。日本も最近はリユースと称する中古が若者の間で流行し、無視できない経済規模を生み出しています。これらは人々の物価対策ともいえ、実に奥が深い話であります。金融対策で物価を上げられるほど単純な世の中ではなくなったともいえそうです。(おわり)
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