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2007-05-25 00:00
連載投稿(1)アジア統合とアメリカ
山下英次
大阪市立大学大学院教授
アジア統合もしくは東アジア共同体の建設について議論するとき、日本人のほとんどは、アメリカとの関係にどう折り合いをつけるかという問題を非常に気にかける。つまり、例によって、日本人の「対米配慮病」が頭をもたげてくるのである。私自身は、この問題は、域外のアメリカの了解を得なければならないものであるとは全く考えないが、余りにも多くの日本人がこの問題を気にかけるので、この機会に私なりの見方を披露させていただきたい。
まず、アジア統合が、アメリカの国益にとっても良いことなのだというロジックは存在しない。アメリカにとっては、アジア統合の進展は、基本的に好ましくないことであるに違いない。アメリカは、第2次世界大戦直後、ソ連との冷戦を戦うために、その前線であるヨーロッパを強化するために、独仏の歴史的和解を後押しすることを通じて、欧州統合の開始に貢献した。しかし、現在は違う。外交上の美辞麗句ではどのように表現しようとも、今後、欧州統合がさらに進展し、ヨーロッパの国際的役割が高まることは、アメリカは自国にとって好ましくないと考えているに違いない。
アメリカは、できれば、アジア統合の進展を阻止したいと考えたとしても不思議はない。ブッシュ政権は、この問題に対しては口出しせず、それがほとんど唯一の取り柄であるが、政権が変われば、民主党であろうと、共和党であろうと、アメリカは、日本に対して、圧力をかけてくるかもしれない。かつて、マハティールのEAEG構想(1990年12月)への日本の参加を公然と阻止しようと圧力をかけてきたのは、レーガン共和党政権下のジェイムズ・ベイカー国務長官であった。
アメリカは、2005年までに、米州自由貿易協定(FTAA)の実現を目指したが、南米諸国の強力な反対に遭って、現在、その実現は「夢のまた夢」という状況になっている。逆に、南米の3大国であるブラジル、アルゼンチン、ヴェネズエラは、メルコスールをベースに、「南米共同体」(CSN)の建設を目指している有様である。かつては、「アメリカの裏庭」といわれた南米だが、いまでは、南米における真の親米政権は、コロンビアのウリーベ政権ぐらいのものである。これは、ほとんど信じられないぐらいの米国の外交政策の大失敗によるものであるが、南米におけるこうした米国にとって惨めな状況は、アジア統合の進展に対するアメリカの嫉妬心を煽ることになるかもしれない。
アメリカが、かつてのように、日本に対して圧力をかけてきた場合、わが国としてどうすべきかに関する私の考えは、次回に譲りたい。(つづく)
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