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2019-10-23 00:00
(連載2)トルコ軍のクルド人攻撃とその国際的な問題点
宇田川 敬介
作家・ジャーナリスト
トルコにとって、反米の延長線上にクルド人対策がある。つまり、クルド共和国創設を狙うアメリカ、特にアメリカ民主党時代のピーター・ガルブレイスの目論見が明らかであると考えるエルドアン政権としては、クルド人自治区を認めればトルコに甚大な損害が出るので、それを防ぐためにアメリカと対立するのは当然の帰結だ。これに対して、戦争をしたくないトランプ大統領は、トルコと戦争をする意思もないので、基本的にはオバマ大統領の公約したイラク撤兵をそのまま行い、シリアにおけるアメリカ軍の撤兵もこのほど表明したのである。この米国の動きを好機と捉え、クルド人独立の芽を摘むためにエルドアン大統領は、シリア北部クルド人自治区に軍を進めた。トランプ大統領は、トルコの武力行使を米軍を使って阻止する気はないとはいえ、それだけではおさまらないので「経済制裁に入る」のだが、軍事制裁がないと確信しているトルコは「難民を送る」などの対抗手段を明らかにし強硬姿勢を崩していないし決して軍事行動をとめることもない。
今回の争いにあっては、双方が相手の国の「弱点」をよく知っているのである。通常は、経済制裁を乱発すると、経済制裁国同志が連携し新たな経済圏を作ってしまう。つまり、経済制裁等のは「孤立化」しなければ意味がない。しかし、すでにロシア・北朝鮮と二つの国が多数の国から経済制裁を受けており、なおかつ、中国も米中貿易戦争によって経済交流が少なくなっている。ここにトルコが入れば、一見、アメリカから経済制裁を受けた国が大きくなってしまうようになってしまう。
一方のトルコからすれば、実際のところエルドアン大統領の最も大きな弱点は経済政策である。2013年にはクーデター未遂も経済問題がなければ起きなかっただろう。アメリカと対立する国はだいたいにして中国を活用したくなるものだが、中国はアメリカと経済戦争状態にあるとはいえ、ウイグル問題に片足を突っ込んでいるトルコとしては、簡単に手を組める状態にはない。言うは易く行うは難しの「反米経済圏」は実現性はいまのところそんなに高くはない。
さて、日本には、このような「簡単な解説」をしても意味が分からなくなっている人が多いのではないか。宗教と経済と政治が混ざりなおかつそこに民族問題が入っているのだから、入り組んで入る。しかし、実際の外交の場ではこのようなことをしっかりと見てゆかなければならないのである。このニュース、単純に攻め込んだ、アメリカが見放したというようなものではない。日本にとっても小アジアから中国に至る地域の関連性からくるこの問題の重要性を確認しつつ、フォローしていく必要があるだろう。(おわり)
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