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2019-10-18 00:00
(連載2)「複雑骨折」の中東情勢
真田 幸光
大学教員
さて、米国では、トルコを率いるエルドアン大統領が、最近では、「EUを脅迫しにかかっている」との見方がではじめています。エルドアン大統領はEUに対して、「我々トルコはシリア難民をヨーロッパに行かせないよう必死に努力しているので、EUはもっと資金支援せよ。さもなくば、今後シリア難民がヨーロッパに流れることになってもトルコは責任を持たぬ!」との主張を始め、露骨にEUに対して資金供出を促し始めています。即ち、2011年シリア内戦が始まって以来、トルコ政府はシリアから国境を越えトルコ国内に逃げ込んで来たシリア難民、3,6百万人を受け入れており、それが住宅不足、雇用不安など、様々な問題をトルコに引き起こしている、とエルドアン大統領は主張してるのです。
EUは、2016年3月に、そのトルコ政府との間で、難民問題に関する合意を締結し、「小さなゴムボートで地中海を渡りギリシャに辿り着くシリア難民をトルコ政府は責任をもってトルコへ引き戻させ、その代償としてEUは、トルコ政府に、数年間で60億ユーロを支払う」と約束しました。しかし、エルドアン大統領は、「トルコ政府はシリア難民をトルコ国内に居住させる為、既に約360億ユーロの費用を掛けているにも拘らず、EUはこれまでトルコに対して、僅か30億ユーロしか払っていない!」と主張しています。エルドアン大統領からのこうした抗議に対してEUは、「いや、EUはトルコに対して約束通りコストを支払っている。むしろ、その合意にも拘わらず、今もって、多くのシリア難民が、トルコ経由でヨーロッパに流れ込み、欧州社会の混乱の火種となっている」と反論し、中東情勢は今、こうした、トルコとEUの対立の影響も受け始めています。
そして、米トランプ政権は、中東地域に軍隊を派遣し武器を供与しているイランの現指導部がいる限り中東情勢の混乱は収拾できないと認識しており、そのイランの現指導部の壊滅を目指していると見られます。対するイラン政府は、「ヨーロッパ諸国との間の核合意維持のため、ヨーロッパから約150億米ドルの金融支援をお願いしたい」と欧州と米国のイラン核問題に関する認識のギャップをつき、欧州におねだりをしています。即ち、イラン核合意継続を巡って、イラン政府と米欧諸国との綱引きが続いている中、イラン政府は、欧州諸国に対して、150億米ドルの金融支援を要求し、「これが得られた場合のみイラン政府は、欧州諸国との更なる核交渉に応じる用意がある」とコメント、米国のイランに対する圧力をむしろ利用する形で、地政学的に見て、イランとの核合意維持を図りたい欧州を相手に資金支援を要求してきているのであります。更に、イランのローハニ大統領は、「イラン政府は、核合意の条件を遵守していく用意があるが、但し、これには条件があり、米国が我が国に対する制裁を解除することである」とも言明しています。これに対して、米国のトランプ政権は、対イラン制裁解除を拒否していることはご高承の通りであります。
こうした中、英独仏三か国は、「トランプ政権による米イラン核合意の一方的破棄は、間違っている」とし、他のEU諸国、そして、中国本土やロシアともこの問題では連携して、「イランとの核合意を今の状態で維持したいので、イラン政府を経済的に追い込むことは避けるべき」と考えています。フランスのマクロン大統領は、先のG7から、イラン政府との間での新しい外交をスタートさせ、欧米諸国とイランとの間での歩み寄りを図り始めています。中東情勢は正に複雑骨折をしているような状態にあると見られます。(おわり)
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