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2019-10-17 00:00
(連載1)「複雑骨折」の中東情勢
真田 幸光
大学教員
シリア内戦とトルコ情勢、そして、イランの核問題と米軍の中東地域からの撤退は一連の関係を持つ出来事であり、複雑な中東情勢の根源の一つかと思います。もちろん、イスラエルとイスラム諸国との対立や、サウジアラビアとイランの確執、イエメン問題なども中東情勢を複雑にしている重要な背景かと思いますが、今日は、上述した点に焦点を充て、眺めてみたいと思います。
先ず、シリア内戦ですが、この問題だけを見ても、複雑であり単純明快な答えなど簡単に見つけられるものではないと思われます。ドイツ紙などでは「それが、シリア内戦と言うものであり、終わりを知らぬ戦いなのである」などと表現をされています。そして先ず、シリアのアサド大統領を軍事的に支援するイランとロシアが、アサド大統領の運命を握っていると見ておくべきであるというのが基本的な見方にあります。現在、トルコとの国境近く、シリア北西部のイドリブ県に、そのアサド大統領率いる政府軍によって追い込まれたイスラム過激派が、アサド軍に対して最後の戦いを挑んでいます。そして、イランとロシアのアサド支援が変わらなければ、イスラム過激派は、アサド政府軍により壊滅される可能性が高いのです。一方、シリア北西部にいるクルド人部隊も、いずれアサド大統領率いる政府軍の支配下に入れられるか、或いは、クルドをテロ組織と見做すトルコ政府軍の直近の軍事展開によって殲滅されるであろうと見られています。更に、シリア国内で情勢不安定なのは、なにもイドリブ県だけではありません。シリア国内の他の地域でも混乱は激しく、やはりドイツ紙は「嫌がらせ、迫害、拷問」などが頻繁に見られ、市民の社会生活は保たれず、平和どころではない、と報道しています。
そして、今日の中東情勢の混乱の遠因を眺めて見ると、第一に2011年、リビアの独裁者カダフィが殺害されたことに象徴されるアラブの春による混乱の拡大、第二に2014年、ウクライナへのロシアの侵攻(この際には、EUもNATOも、米国もウクライナ支援が叶わなかった)などが挙げられます。その上で、欧州ではこうした失敗を鑑みて「シリアのアサド政権を倒す必要がある。何故ならアサドは、西側に属さず、また中東地域における米国の経済的利益にも抗する存在だからである」との声が出ています。そして、古くは、2003年、米軍のイラク侵攻時のブッシュ大統領は、シリア政府を名指しして、「アサド政権は、テロリストを支援している」とシリアを批判したことも、今更ながら思い出されます。
こうした中、欧米諸国にとってはパイプライン建設計画(天然ガスを、カタールからサウジ、ヨルダン、シリアを経由してトルコを通り欧州に輸送する)を考える上で、シリアのアサド政権が邪魔な存在となります。しかし、パイプライン建設が成功すれば、ロシアやイランの利益やその両国の欧州に対する影響力の低下に繋がることは必至です。だからこそ、ロシアとイランは、アサド支援をより強化しているのです。こうしたことから、先ず、シリア内戦だけを見ても複雑骨折していることが分かります。(つづく)
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