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2019-10-08 00:00
(連載1)米中「オピオイド」問題の行方
倉西 雅子
政治学者
アメリカと中国との間の対立と言えば、誰もが真っ先に頭に浮かべるのが、米中貿易戦争です。あるいは、安全保障の最前線では、中国の軍事的台頭を背景とした新冷戦の構図も出現しています。しかしながら、こうした政治や経済の舞台の裏側では、熾烈な米中‘アヘン戦争’が繰り広げられているようなのです。
9月18日付日経新聞朝刊に、興味深い記事が掲載されておりました。それは、「フェンタニル」という名の鎮痛剤をめぐる米中対立です。「フェンタニル」とは、1960年代からがん患者の痛みの緩和剤として使用されてきました。麻薬と同様の幻覚や高揚感を得られることから、アメリカ国内で同薬剤への依存症が蔓延しています。2017年には、過剰摂取による死亡者数が2万9千人にも上り、ここ4年間にその数が9倍にも増加したのですから、米政府としても看過できない問題なのです。
それでは、「フェンタニル」問題が、何故、‘米中阿片戦争’へと発展したのでしょうか。「フェンタニル」とは、医療用鎮痛剤の「オピオイド」の一種です。「オピオイド」とは、恐らく‘オピウム(opium)’、即ち、‘アヘン(阿片)’を語源として命名されているのでしょう。「オピオイド」問題とは、いわば、蔓延の舞台はアメリカに移ったものの、現代の阿片問題でもあります。そして、ここでどうして中国が関わるのかと申しますと、それは、近年、中国からの密輸品が激増したことに因ります。トランプ米大統領は、中国の習近平国家主席に「フェンタニル」の米国への流入を阻止するように要請したにもかかわらず、一向に密輸は減少しませんでした。そこで、業を煮やした同大統領が、中国制裁第4弾を発動したのです。
中国からの密輸品が急激に増えたのは、「オピオイド」の規制が強化されたために正規ルートの供給が絞られたからです。医療を目的とした医師による処方が減少し、同薬剤を製造してきた米製薬会社は苦境に陥っています。「オピオイド」を製造してきた大手製薬会社であるパーデュー・ファーマは、2千件を越える集団訴訟によって一兆円を越える和解金の調達を迫られ、9月15日に連邦破産法11条の適用を申請しました。しかも、地方自治体も、オピオイドの中毒・過剰摂取対策のために投じてきた多額の予算の返還を求めて同社を訴え、「オピオイド」包囲網ともいうべき状況となっていたのです。そして、この医薬品としての「オピオイド」の供給減少を埋め合わせるように侵食してきたのが、中国からの密輸品です。(つづく)
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