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2019-10-02 00:00
(連載1)在韓米軍撤収の可能性と核保有の示唆
斎藤 直樹
山梨県立大学教授
2019年8月22日の文在寅政権による日韓GSOMIA(軍事情報包括保護協定)の破棄決定により、日韓だけでなく日米韓三国の安全保障協力は弱体化を余儀なくされることが懸念されている。同決定が日韓関係だけにとどまらず米韓関係も揺るがす結果、遅かれ早かれ在韓米軍の縮小や撤収という流れにつながるのではないかとの懸念が広がり始めている。そうした可能性に対し、トランプ大統領はどのように捉えているであろうか。米韓合同軍事演習に要する経費や在韓米軍の駐留経費に常々疑問をトランプは提起してきた。2018年6月12日の米朝首脳会談の記者会見で、「いずれは在韓米軍を撤退したい。多額の費用がかかるからだ」と勢い余って発言してしまった。トランプが駐留経費負担への不満を事あるたびに述べているとは言え、在韓米軍と米韓同盟が必要でなくなったと公言しているわけではない。トランプの主眼はあくまで韓国政府側の経費負担の引き上げを念頭に置いた取引にある。今後、トランプは合同軍事演習の経費負担や在韓米軍駐留の経費負担の一層の増加を文在寅大統領に求めることが予想されるが、文在寅がどのように応じるかは明らかではない。
GSOMIAの破棄決定を巡りトランプの文在寅への不信と不満が高まるなかで、これ以上の駐留経費負担に消極的な姿勢を文在寅が示すようなことがあれば、在韓米軍の縮小は現実の問題となり、その延長上に韓国の安全保障の大前提となってきた在韓米軍の撤収や米韓同盟の破棄という問題も浮上してくる可能性がある。この点について、トランプ政権の高官から在韓米軍縮小の可能性について発言があった。9月6日にミシガン大学での講演でビーガン対北朝鮮特別代表は北朝鮮の非核化に向けた進展があるならば、在韓米軍の縮小を考える可能性を示唆した。こうした在韓米軍の縮小議論は遠からずして撤収問題に発展しかねない。しかしかりに在韓米軍が撤収に踏み切るという事態が現実になることがあれば、現存の米韓同盟は事実上、解消に向かわざるをえないと考えられる。
その際、北朝鮮による核の脅威に対し米国が韓国に「核の傘」である拡大抑止を提供し続けるかどうか怪しくなるであろう。そうした展望は金正恩朝鮮労働党委員長にとってみれば、願ってもない状況であろう。もしも在韓米軍が韓国から撤収するようなことがあれば、米軍の去った韓国はほとんど丸腰の状態となったと金正恩の目に映ってもおかしくない。そうした状況の下で、有事の際には韓国軍だけで朝鮮人民軍に対処しなければならなくなりかねない。通常戦力において南北間で軍事的に一定の均衡が成立しているような感があるが、問題は北朝鮮が開発・保有する核ミサイル戦力の存在である。日々増強が続いているとみられる核ミサイル戦力を背景に金正恩が韓国に激しい恫喝を加えるといった事態が容易に想像される。
そうした状況の下で、韓国側はどのような対抗策を講ずるであろうか。しかも金正恩が吹聴する「完全な非核化」がまやかしに終わることが現実味を帯びる中で、韓国の一部では核保有論が論じ始められている。この発端になったのは上述の9月6日のビーガンの発言である。「アジア諸国が核を開発する技術と能力があったにもかかわらず、核保有がより多くの危険を作る恐れがあるという判断にしたがい米国との同盟関係に含まれた核拡張抑止体制に編入した・・北朝鮮が非核化をしなければ韓国と日本がある瞬間自主的な核能力を再考慮するかもしれない」と、ビーガンは韓国の核保有の可能性を示唆した。これを受ける形で、「北の非核化が失敗した場合、国家と国民の生存権保存のために核武装も辞さないことを知らせるべき」とする韓国在郷軍人会の見解が噴出した。こうした核保有論は一部に過ぎないが、非核化が遅々として進まない状況がこれ以上続くとすれば、そうした声は大きくなろう。どういう意図があるか知らないが、なによりもトランプ政権の高官が核保有の可能性を示唆し始めたことが重大である。これに対し、肝心の文在寅はこうした事態をどのように捉えているであろうか。この間、北朝鮮との融和を最優先する文在寅は相変わらず金正恩のご機嫌をうかがうような言動を繰り返している。北朝鮮の非核化について真剣に論じるどころか、南北統一について文在寅が吹聴していることは周知のとおりである。(つづく)
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