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2007-05-22 00:00
東アジア共同体と「人間の安全保障」
安江則子
立命館大学教授
欧州統合が「欧州の斜陽」という危機感とともに進展していったのに対して、東アジアは「世界の成長点」として注目される中で地域統合のあり方を模索している。グローバル化のダイナミズムを取り込みつつ、その「負」の側面を最小化することが課題であろう。東アジアにおいて、貿易・投資といった経済圏の形成と、種々のリスク管理を中心とした機能的アプローチがとられることは、この地域の経済的・政治的な条件からみて必然的だと思われる。東アジアにおいて、ただちにEU型の拘束力ある制度を備えた地域機構を創出することは、必要性も実現可能性も高くはなかろう。アジアではアジア型の地域協力と、緩やかな政策調整のシステムを構築していくことに異論はない。
それでも少し気になるのは、「東アジア共同体構築に係る日本の考え方」(平成18年11月)の中で、「普遍的価値の尊重とグローバルな規範の遵守」として、人権・民主主義とWTOによる自由貿易のルールがごく自然に並べられていることである。目指しているのが、単なる互恵的な経済圏にとどまらず、「共同体」であるとするなら、何らかの共通価値を示すことに意味があろう。ただし、近年提起されているグローバル・ガバナンスの問題は、例えば児童労働による製品が自由貿易の原則のもとで国際市場に出回るなど、普遍的価値と自由貿易のルールとの軋轢である。アジアは、特にこうした複雑な問題を内包した地域であり、企業も含めた様々なアクターの利害の絡み合う課題について、日本や日本企業が指導的役割を発揮することが期待される。
欧州諸国は、近年そのイメージとは裏腹に、アジア地域に対する経済的な関心の大きさから、従来と比べて人権などの理念をあまり前面に出さない現実主義的なアプローチをとるようになっている。これは東欧やEU加盟予定国に対する態度とは明らかに異なっている。日本はアジアの多様性と特殊性に配慮しつつ、日本外交の看板の一つになった「人間の安全保障」の理念を、地域圏構想の中でも生かすことで存在感を示してもらいたい。
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