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2019-09-14 00:00
(連載2)GSOMIAの破棄決定と無関心を装う文在寅
斎藤 直樹
山梨県立大学教授
またミサイル開発についても2019年5月以降、新型の短距離弾道ミサイルが頻繁に発射されている。5月4日と9日に発射された短距離弾頭ミサイルはロシアのイスカンデルの北朝鮮版であるとみられていた。この短距離弾道ミサイルは固体燃料を使用し移動式発射台から発射可能であるだけでなく核弾頭搭載可能であると目される。しかも同ミサイルは低高度で飛行するだけでなく着弾する前に変則的な飛行することから、韓国配備の迎撃ミサイルでは迎撃が難しいとみられる。同ミサイルは北朝鮮の短距離弾道ミサイルの代表格であるスカッドよりはるかに深刻な脅威を与える。この間、トランプの呼び掛けに金正恩が応じたことにより、6月30日に急遽、板門店で米朝首脳会談が開催される運びとなった。同会談は両者の蜜月ぶりを世界に向けてアピールすると共に、数週間以内に米朝実務者協議が開催されると予定されたが、9月上旬まで実務者協議は開催されていない。
その後、8月上旬に実施が予定された米韓合同軍事演習に猛反発する格好で金正恩は軍事挑発の発動をちらつかせた。その発端になったのが7月23日に金正恩による新型の建造中の潜水艦の視察であった。しかも潜水艦搭載の海中発射弾道ミサイルの発射実験が今後、実施されるのではないかと推測されている。続いて、7月25日、31日、8月2日、6日、10日、24日と金正恩指導部は短距離弾道ミサイルを立て続けに発射させている。しかも発射された弾道ミサイルにはイスカンデルの北朝鮮版だけでなく別の新型の短距離弾道ミサイルも含まれているとみられる。この間、トランプは短距離であれば別段、気に留めない姿勢を装っているが、米韓軍事演習が終わっても金正恩が軍事挑発に打って出るとの姿勢を崩してないことに、トランプも内心穏やかではないであろう。こうした中で危機感を持ったポンペオ国務長官が8月27日に「ならず者の行動を看過できない」と非難すると、崔善姫(チェ・ソンヒ)北朝鮮第一外務次官は「米国との対話に対するわれわれの期待は消えており、これまで取ってきた全ての措置を再検討せざるを得ない状況に追いやられている」と猛烈に反駁した。実務者協議の開催どころか、米朝高官の間で激しい中傷合戦がまたしても繰り広げられているのである。
しかも北朝鮮の弾道ミサイル開発に拍車が掛かっている感がある。その中には上述の短距離弾頭ミサイルだけではなく日本全域を叩くことができる射程距離2000キロ・メートルに及ぶ中距離弾道ミサイルが配備されたとの報道も行われている。同様に、ICBM用の固体燃料も開発中であると推測されている。トランプと金正恩が親書を交換し合い友好関係を維持しているかのように装っている一方、北朝鮮の核ミサイル開発は一段と加速しており、近隣の韓国や日本に対する脅威が日増しに現実になろうとしている。上述の8月に実施された米韓合同軍事演習だけでなく、時期を同じくして日韓対立が先鋭化の一途を辿っていることが、その間隙を突く格好の機会を金正恩に与えているのである。上述の通り、短距離弾道ミサイルの主な目標が韓国であるにもかかわらず、文在寅は北朝鮮の核ミサイルの脅威に全く関心がないように装っている感を受ける。日本の輸出規制への対抗措置として8月22日にGSOMIAの破棄を決定して以降、日本への非難は一向に収束する気配をみせていない。文在寅による扇動に踊らされるかのように、日本製品不買活動や日本旅行中止を叫ぶデモを伝える報道が行われている。さらに9月6日には釜山市議会が日本製品の公共購買を制限する旨の条例を可決すると、同日、ソウル市議会も同様の条例を可決するという挙に出た。
この間、文在寅の最側近のチョ・グク氏を巡る数々の醜聞が連日報道されている。しかも9月6日には韓国の検察がチョ・グクの夫人を私文書偽造の疑いで在宅起訴に踏み切った。にもかかわらず、その疑惑の渦中の人物を法務長官に任命しようと文在寅は躍起になっている。民主主義国家でこのようなことがどうして起きているのか深刻な疑問を持たざるを得ない。表向き上、三権分立とはいえ、大統領一人にあまりにも大きな権限が集中しているからでもあろう。北朝鮮の金正恩体制は一人独裁体制であると揶揄されるが、永遠の学生運動家である文在寅とその取り巻き連中が青瓦台でやっていることも独裁体制の様相を呈している感がある。ほんの数年前、醜聞にまみれた朴槿恵大統領を権力の座から引きずり下そうとして「ロウソク革命」を扇動した面影は今の文在寅にない。今見られるのは大統領の絶大な権力を振りかざし、なんでもできるかのように民主主義を根底から揺さぶろうとしている文在寅の姿である。この先、文在寅は韓国と韓国民を一体どこへ連れて行こうとしているのであろうか。(おわり)
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