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2019-09-09 00:00
日系米国人学者の述べる米中手打ちの事例
中山 太郎
非営利団体非常勤職員
訪日中の日系米国人学者との会話の内容を、ご参考までに次の通り紹介したい。
米中がどこかで手打ちをする場合、英語と中国語の差異を使う場合と両国の風俗習慣の差異を使う場合が考えられる。前者の例として、1972年のニクソン・キッシンジャーによる対中関係開始の上海コミュニケ、そして1979年のカーター時代の国交樹立宣言だ。米側は、recognize(しっかりと認める)とaknowledge(ただ内容は分かったとの相手へのメッセージ)を使い分けて文章を作成したが、中国側は両方の言葉とも「承認」との中国語で押し通し、米側はその訳語に目をつぶった。後者の例としては、2001年4月、中国海南島周辺で、米偵察機に小型の中国の戦闘機が脅しをかけ、パイロットの未熟からぶつけてしまい戦闘機は墜落、偵察機は海南島へ緊急着陸した。常に国内に強硬な政権反対派を抱える中国は、ブッシュ米大統領自らテレビに出て公開で謝罪せよと要求した。大統領は事件解決のためテレビに出たが、われわれ英語圏の人間からは、明らかにこうした事件が発生したことは”SORRY”と述べたに過ぎなかったが、中国側は国内で大々的に米大統領が「謝罪した」と宣伝した。それまで行っていた米中軍事交流は、1年以上停止され、機体も中国側がしっかりとコピーを取った後に返却してきた。
ところで人種問題だが、日本を遠く離れ暮らしていると、色々な場面で助けてくれる人には韓国、中国系の人が多いのも事実だ。80年代日本の経済繁栄をうらやみ、米連邦議員や労働者などがハンマーを振り上げて日本車を打ち壊すパーフォーマンスなどを行い極めて反日の空気が強かった時、日本人や日系人は危険地域には立ち入らないないように気をつけていたが、そうした意識に乏しい韓国人がデトロイトで日本人と間違えられて殺されたことを思い出す。日中に関しては、日本でも医療事情、治安の悪い生活の不便な地域に派遣される外交官には、瘴癘地手当という特別手当を出しているが、驚くことに、共産主義政権下で医療事情が悪く歯の治療にも香港まで行かねばならない中国赴任者と同じように、民主主義国で医療事情も極めて良い日本赴任にも同じように支給しているのだ。知り合いの米外交官へそれを話すと、声を低め、「そうなんだ、日本勤務は隠れた人気ポストだ」と答えた。米の対アジア政策の背景には、キッシンジャーが唱えた、アジアでの真のパートナーは日本でなく中国だという基本ラインは、脈々と続いているのだ。
米は今、要人の交流の一部解除とか武器輸出などで台湾のテコ入れに熱心だが、自国の破滅をかけてまで台湾を守るわけではない。「フォーリンアフェアーズ」などの外交専門誌に折に触れ掲載される、台湾支援の段階的減少論だとか台湾切り捨て論には注意を払ったほうが良い。米には、マチス前国防長官のような、同盟国としての日本の重要性を主張する人間もいれば、中国の手先となり日本へ冷たい目を向ける、スーザン・ライスのような人間もいる。
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