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2019-09-05 00:00
「傾聴に値する不愉快な予言」を読んで
中山 太郎
非営利団体非常勤職員
9月2、3日付けの姉妹e-論壇「議論百出」に掲載された中村仁氏の「傾聴に値する不愉快な予言」面白く読みました。結論の我々は複眼思考を持たなければならない、というご趣旨に大賛成です。そのうえで感想を述べます。このジム・ロジャース氏は、典型的な戦前において中国で活躍した米のMissionary Mindの方に似ておられるということです。今では読まれなくなったノーベル賞作家のパールバックの大地の世界、多くの可哀そうな中国一般人へキリスト教文明の恩恵を持たらすのが使命だとの人々です。
多くの米国の学者、教育者、ジャーナリストなどが影響を受けました。「タイム」誌などで、日本批判、中国支持の論陣を張ったメディア王のHenry Luceも宣教師の息子です。米は多くの宣教師を派遣し、それらの人々は各方面で活躍したのです。中国の共産党政権成立後の一時は、キリスト教弾圧で低迷しておりましたが、共産党思想の希薄化の空白を埋めるイデオロギーとして、今やひそかに復活を遂げているようです。当時は、明や清時代などの指導部への西洋文明寄与で、中国指導層に一定の力を持つカトリック教のほうが優越していましたが、現在の推定の信者数は、その十倍以上の一億人を超すといわれています。米社会は宣教師を通じ、無辜の中国人をいじめる日本の弱い者いじめは怪しからんと触れ回りました。中国の当時の指導者の蒋介石は、敬虔なプロテスタントです。夫人の宋美齢は、父親が中国人宣教師です。しかし。世の中は単純ではありませんでした。
大戦終結、米中が日本へ勝利したのちの状況です。道徳主義を時として標榜する米国外交は、腐敗にまみれている蒋介石政権を嫌ったのでした。当時の米国務省の対中問題報告書などは明らかに突き放しております。まだ全貌が明らかでない共産党の毛沢東を持ち上げたエドガー・スノーなどが活躍し、米国の知識人たちの協賛を得たのでした。ひところ米国は、共産主義を支持し、民主主義の自由中国、国民党が逃げ込んだ台湾を見捨てようとさえしたのです。それを一挙に目覚めさせたのが、1950年の朝鮮戦争でした。しかし、米国は常に先祖返りの可哀そうな中国を、キリスト教文明の恩恵で満たすのだとの使命感にとらわれるようです。ペンス副大統領の最近の演説などには、その気配が見られるとする米や中国の学者もいます。
ジム・ロジャース氏は「自分は中国を3度、車で横断した」、「実にうまく資本主義を取り入れている」と述べられているようですが、こうした言葉は60年代に日本から訪中した急進的な政治家や文化人たちの言葉とそっくりです。最も奥深い中国では、毛沢東自身が、自国の繁栄、技術の進歩をまともに信じさせられていたのでした。狭い土地によそから持ち込んだイネや麦などを密植して、生産性を急速に上げる方法を見つけたなどと称していたのでした。同氏は、シンガポールに居住地を移し、令嬢には中国語を学ばせておられるようですが、私の知人の豪州人が、金持ちではありませんが同地へ移り、感想は深みのない退屈な場所だとのことでした。シドニー、メルボルンの中間に作った人工都市キャンベラのアジア版だとも述べておりました。勿論人それぞれ好き好きです。しかし、10年後、ジム・ロジャーズ氏ご一家はどうしておられるか興味が惹かれます。金持ちの同氏が、あえて、逆張り宣言してみせ人々を驚かしたとしか思えないのです。
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