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2019-09-02 00:00
(連載1)協調しない世界
岡本 裕明
海外事業経営者
香港で「人間の鎖」が行われ、13万5000人、約60キロの長い輪が出来たと報じられています。この香港での「イベント」は、1989年バルト三国が当時のソ連からの独立を訴えて行ったことから30年たったことを祝したもので、その時の鎖は200万人600キロだったとされます。なぜ、中国は香港を強力にコントロールしようとしているでしょうか?一国二制度は名ばかりのものとなりつつあるのでしょうか?たぶんそうでしょう。私がよく指摘する中華思想は当然、香港にも及びます。中国本体が全ての中心であり、そこにがっちり組み込まれるのが冊封という考え方です。それに対して香港市民は体を張っての抵抗を続けます。どこに落としどころがあるのでしょうか?中国本土は一歩も引くことはなさそうです。なぜならそれは中華思想の敗退を意味するわけで、共産党のメンツどころの話ではないのです。私は厳しいバトルが続き、香港市民が諦めるまでやり続ける気がします。
週末開催されたG7。開催前からその成果が危ぶまれていましたが、結局当初の見込み通り首脳宣言はなく、たった1ページの成果文書が出ただけです。トランプ大統領は「なぜG7に参加しなくてはいけないのか」と述べたとも報じられています。なぜG7が機能しなくなったのでしょうか?トランプ大統領のパワーもそうですが、私は欧州のバラバラになりつつある連携に根本理由が存在するのではないかとみています。
つまり、10年前の一体化する欧州でPIIGS問題を切り抜けたあの苦労を分かち合う体制が無くなったことです。ゼロなのです。理由の一つに本来では厳しくなりつつあるのにどこの国も経済的危機感が欠如しているのです。欧州危機が叫ばれた時、一部の国の国債は売られ、ギリシャは厳格な規律を課したドイツを中心とするEUから厳しい条件を突き付けられました。ただ、あの時のEUの結束力は問題解決に向けた一致性が見られました。今、スペインの10年物国債はざっくり利回りが0.143%、ポルトガル0.175%、イタリア1.221%、ギリシャ1.949%のレンジです。一方のアメリカは1.535%なのです。イタリアがアメリカより低利回り?そんなバカなことは信じられませんが、これが現実なのです。
10年前の危機を乗り越えたところで、国家元首も国民も10年間の回復の歴史の中で各々色を出してきました。それは概ね10年前の否定であります。あの時のあの問題を反省した上で我々は違う国を目指す、というボイスが出てきます。これは「EUにおける地域主義の勃興」と言ってもよいでしょう。(つづく)
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